【戸田久実さん】新聞でアンガーマネジメント

 「言うことを聞かない子どもにイライラ」「つい感情的に叱ってしまい自己嫌悪」。そんな悩みにアドバイス。

 子育ては怒りの連続……。そう悩むママは少なくありません。コミュニケーションの専門家である日本アンガーマネジメント協会理事の戸田久実さんに、悩み解消法を聞きました。

 

 

――忙しさで余裕がなく、ついイライラしてしまいます。

 怒りの感情は身近な対象ほど強くなる特徴があります。どうしても自分が出産しているので、子どもは「思い通りになるのでは」と期待値が高くなりがちです。だからこそ「なぜ言うことを聞いてくれないの」と腹を立ててしまう。叱ってばかりで自己嫌悪に陥るパターンもよくありますね。でも、怒りは人間にとって自然で大切な感情なので怒ってもいいんです。振り回されないように扱いさえすれば、それがアンガーマネジメントです。

 

――小学生になると「これくらいできて当たり前」「こうするべきだ」と期待する気持ちも強くなってきました。

 「べき」は自分の理想や譲れない価値観を象徴する言葉です。「毎日宿題に取り組むべきだ」「○○ちゃんができるんだから、うちの子もできるべきだ」。「べき」にがんじがらめになってしまうと、子どもが期待に沿った行動をしないときのイライラが増えてしまいます。「べき」は持っていてもいいのですが、少し緩めることが大切です。

 

――具体的にどうしたらいいですか。

 「べき」の境界線を①OKゾーン②許容範囲ゾーン③NGゾーンの三重丸に当てはめて考えてみましょう(図参照)。②と③の間が「怒る、怒らない」の境界線です。ポイントは②許容範囲ゾーンを広げるこ自分なりの「べき」が「本当に常識なの?当たり前なの?」と振り返り、価値観や視野を広げてみましょう。許容範囲を広げてみることが大切です。そのために、新聞を読むことをお勧めします。世の中の多様な意見に接し、異なる視点を知ることで、視野が広がり、自分の考えを相対化できます。新聞を広げるとさまざまなニュースが目に飛び込んできますから、今まで興味がなかったテーマにも関心を持てるようになり視野も広がりますよ

 

 

――子どもの成長とともに意見がぶつかることも増えてきました。

 子どもも大人も自分では常識と思っていることを違う視点で「こうあるべきだよね」と言われるとイラっとしませんか。子どもは経験が少ないので疑問に思うことが多い。「自分のこうあるべき」を押し付けずに、子どもの理解度にあわせて親の考えを伝えるのが大切です。

 

――どうすればよいのでしょうか。

 例えば「将来こんな仕事に就きたいなら、こういう力が必要だよ」というように、子どものイメージが湧くように話すと効果的です。私は息子が小学生の頃に子ども新聞を購読していました。言語化が難しいテーマを「子どもにどう説明したらいいのかしら」と悩むママも多いですよね。一緒に読んで納得したり、説明するヒントをもらったり……。子ども新聞はとても役立ちました。難しい内容を易しい言葉で説明する言語能力を磨くには新聞が適しています語彙(ごい)力が少ないと相手に気持ちが伝わらないストレスから激しい怒りになりやすいので、言葉を増やすことはとても大切です。

 

――子育てに奮闘する一方でキャリアやスキルアップにも悩む。そんな働くママへのメッセージをお願いします。

 自分の軸をしっかり持つことです。現代は情報過多で振り回されることが多いですよね。母親はこうあるべきだ、キャリアを積み上げるにはここまでできるべきだ、とか。でも自分の人生なので、優先したいことと「まあいいかな」と思えること、その境界線を捉えておくと、自分の軸が持てるようになります。後悔しない判断ができる自分でいたいですよね。自分の今後を見つめたり、大事にしたいことをつかんだりするためには客観的な視点や俯瞰(ふかん)した目線が大切です。新聞という情報源を活用して、その力をつけていくといいですね。

戸田久実さん

一般社団法人日本アンガーマネジメント協会理事

アドット・コミュニケーション株式会社代表取締役

 立教大学卒業後、大手企業勤務を経て研修講師に。2008年にアドット・コミュニケーションを設立。官公庁や民間企業などで「伝わるコミュニケーション」をテーマにアンガーマネジメントやプレゼンテーションなどの研修や講演を実施している。講師歴は26年。著書に「『つい怒ってしまう』がなくなる 子育てのアンガーマネジメント」(青春出版社)などがある。

2020年4月24日公開