「仕事と育児どうやって両立させればいいの?」
「やりたい仕事はあるけど、子どもが少し手を離れるまで待つべきかな」
「独立は興味あるけど、自分には無理だと思う…」
そんな思いを抱えているお母さんたちがたくさんいらっしゃると聞き、今年も東京都の創業支援施設「Startup Hub Tokyo」でイベントを開催しました!
ゲストはフラワーアーティストの前田有紀さんと、「ココナッツオイルブームの立役者」としても知られるブラウンシュガーファーストの荻野みどりさん。モデレーターは共同通信の山脇絵里子さんにお務めいただきました。
事後配信を含めて800人以上の方にご視聴いただいたこのイベント。
まとめた記事も読みたい!という声にお応えして、当日の様子をご紹介します。
――起業のきっかけは…
山脇さん:お二人の起業・独立のきっかけを教えてください。参加者の方からは「起業してから妊娠、出産すると会社をうまく回していけるか不安」という質問もいただいています。
■自分の軸で生きることが大事
前田さん:私は生花店で働き始めて3年目、修行している真っ最中に妊娠しました。花屋は長時間の立ち仕事で、重いものを運ぶなど、妊娠していると厳しい仕事もあります。そこで、起業を決めました。「1人目の出産は大変だから、起業はもっと後でもいいのでは」と心配されることもありましたが、社会や周囲の声でなく自分の軸で生きることが大切だと思っていました。初めは個人事業主としてブーケ作りなどをしていましたが、出産後に仕事の幅が少しずつ広がっていきました。
■自分と子どもが食べる分は稼ぎたい
荻野さん:出産後、「自分や子どもの食べる分は自分で稼ぎたい!」という気持ちが強くなったことが起業のきっかけです。産後は一番ゆっくりしていていいと言われる時期ですけど、子どもと向き合うだけというのは何か違うな…と感じていました。当時は授乳しながらオークションで服を落札して古着屋に売りに行ったり、料理教室を始めたり、ジュエリー販売もやってみましたが長続きしませんでした。食に対する思いが強く長く続いて今に至りますが、初めからこうしようとプランを決めていたわけではないんです。
――当時、悩んでいたことは…
山脇さん:妊娠中や出産後は、体が動かしにくかったり、育児で自分の時間が自由にならなかったりと制約が増えますよね。そんな中でもお二人はチャレンジしていて、すてきだと思います。参加者からは「仕事と家庭を両立できるイメージを持てずにいます。本当は思い切り仕事をしたいけれど、子どもを犠牲にしてしまわないかと考え思い切れずにいます」というコメントをいただいています。起業当時の苦労や悩み、それをどう克服していったのか、周囲のサポートの活用法も含めてお話しいただけますか。
前田さん:出産後は子どもを抱っこするので手がふさがります。花は手を使う仕事なので続けていくのは難しいかなと思っていた時期もありました。そんなときにサポートしてくれたのが、市場の仲間や以前一緒に働いていたスタッフでした。ベビーカーで現場に行って、子どもが寝ている間に仕事をしたり、仲間に子どもを抱っこしてもらいながら作業したり。手を貸してくれる人のおかげで何とかやってこれたと思います。踏み出さないと出会えない人や、気づかないことがたくさんありました。
■「子どもを犠牲にしてまで」と言われて…
荻野さん:「あなたの幸せのために」とか「子どもを犠牲にしてまで」という言葉はすごく悩んだワードでした。小さい子どもを抱えて働いている自分は悪い母なのか、母性が足りないのか――不安に思いながらやってきました。娘は今年10歳になります。四六時中一緒にはいられなかったかもしれないけれど、娘は「犠牲になった」とは全く思っていないし、私も子育てを手抜きした感じはしません。一緒にいる時間が濃密なので、いらいらすることもない。仕事で発散する場所があるから、心穏やかに「お母さん」ができていると思います。
前田さん:娘さんを見て「犠牲にしたとは思わない」というのはすごく励まされます。上の子は4歳ですが、私が仕事でいないことを敏感に感じるようになってきて、下の子だけ市場に連れていこうとすると泣いて大変なこともあります。一方で、仕事をしているお母さんに興味を持っているようで、週末に花屋を出店するときについていきたがります。母親として習い事をさせてあげられていないことに引け目を感じることもありましたが、息子は違った形で社会勉強をしていると気づきました。背中を見せていきたいです。
山脇さん:お母さんの仕事を通じて社会を見ているということですよね。新聞記者も長時間労働で泊まり勤務もあって一緒にいる時間が少ないんですけど、よく職場に子どもを連れていっていました。夏休みに隣に座らせて宿題をさせたりすると、同僚が教えてくれたりして。周りにサポートをお願いすることは大事ですよね。
■周囲のサポート 「カード」をたくさん持っておく
前田さん:今日は住んでいる市の一時保育に下の子を預けてきました。家族じゃなくてもサポートしてくれる人がたくさんいます。家族も選択肢の一つにしつつ、たくさんの選択肢を持っていると必要な場面に合わせてサポートしてもらえると思います。
山脇さん:サポートしてくれる人たちのカードをたくさん持つことですよね。私の娘は大学生ですが、小さいころから10年来てくれていたシッターさんは家族同然で、その人を通じて社会のことを知ることもありました。人に頼っていいんだと思えることは大事ですよね。
前田さん:そうですね。前はアナウンサーとして常に完璧でないといけないという思いがありましたし、子育てにも完璧像を持っていました。でも、仕事をしていて、やりたいこともあるとなると思い通りにはいきません。理想を捨てて、今、自分にできる最善を選んでいくと気持ちが楽になりました。
■仕事と子育て、60点ずつなら120点!
山脇さん:よく分かります。私も後輩記者に「子育てと記者の両立は大変ですよね」と言われたら、「両方100点じゃなく50点50点でいい、60点ずつなら120点になるよ!」と伝えています。完璧を求めないでできることをやること、そして「半歩踏み出すこと」が大事だと思います。
荻野さん:そうしたら整っていくんですよね。「あの人大変そうだね」と周りが心配してくれます。「私の得意な領域は任せて!でも残りは助けて」とよく言っています。できない自分を認識して人に任せていくのがおすすめです!
(後編に続く)
2021年4月30日公開