人として「豊か」になるために、世の中の流れをニュースを通じて知っておくことは当然だと思っている――。双子を育てる母であり、整理収納アドバイザーとして活躍するEmi(えみ)さんにニュースとの付き合い方について聞いた。会社員時代は、新聞で読んだニュースが取引先との会話の糸口に。母として、経営者として時間に追われる今は、新聞社の音声ニュースを重宝しているそう。就職や子育てで暮らしが変わるのに合わせ、自分にとって〝ちょうどいい〟方法を選んでニュースに触れているという。
目次
会社員時代に始めた「心の貯金通帳」自分の感情・思考をノートに書き留める
2004年、通信販売会社に入社した。暮らしにまつわる商品を扱う通販サイト「ベルメゾン」を運営する会社で、商品企画を担当。取引先は家具を作る会社や職人が多く、40、50代の男性とやりとりをすることが多かった。
どうしたら、会話をスムーズに進められるだろう。会社に何紙かそろえられていた新聞をジャンル問わず読んだ。社会情勢を知るため、鉄の市場価格や株価など何でも吸収した。企画につながるようなニュースや読んで興味を持ったニュース記事を切り取り、「どう思うか」「何が考えられるか」と自分の意見とともに、ノートに切り貼りした。
この習慣が結実したのが、提唱している「マイノート」だ。始めたのは会社員時代。自分の心を動かしたものや考えがどこかに行ってしまわないよう「心の貯金通帳」として書き留めた。仕事やプライベートに関すること全てを1冊のノートに記すことで、自分軸が見えるという発見があった。20年たった24年9月時点で、マイノートは75冊になった。
子育て中は社会に置いて行かれる感覚があった
結婚から2年が過ぎた08年、ブログ「OURHOME」を開設した。「新居のインテリアや収納を夫婦の記録として残したい」と思ったことがきっかけだった。双子の出産・子育てを機に退社した後は、暮らしに関する商品を企画販売する会社を運営している。音声メディアVoicyで自身のラジオコーナーを持ち、SNSやブログでの発信も続けている。
会社員から双子の母に、そして経営者に。時の流れとともに生活スタイルは変化し、ニュースとの関わり方も変わった。子どもがまだ小さくて、子育てに追われていた時は、新聞の1面だけをざっと読んでいた。子育て中は社会に置いて行かれる感覚があった。社会や世間の動きに触れるため、ニュースが必要だった。
今は、家事や移動中に聞く「ながらニュース」がちょうどいい
「こんな世界があったんだ」と価値観を変えたのは、音声配信サービスでのニュースだった。Voicyで日本経済新聞や毎日新聞が配信するニュースを毎日10分聞く。片耳にイヤホンを付けて家事をしながらや通勤中にも。家事や仕事に追われる今は、片耳での「ながらニュース」がちょうどいい。
男性が外で仕事をして女性が家庭で家事をする。女性が朝食を用意している間に男性が、机で新聞を思いっきり広げて読む。ひと昔前はそんな日常があった。
でも今は、働き方も生活も人によってさまざまだ。例えば、高齢者用には大きな字の新聞を。子ども向けは持ちやすいよう紙面を小さく。かばんに入れて持ち運びやすいサイズの新聞があってもいい。「これです」と決まった形を押しつけるのでなく、新聞も多様でいい。音声も、好きな声や頭に入りやすい声は人それぞれ。字体の読みやすさも人によって違う。選択肢が増えることや選べることが大事だ。
家族のLINEで共有した記事を食卓の話題に|子どもが意見を言うのが怖くない世界にしたい
子どもが3、4歳になったころからは、自身の習慣であるマイノートを一緒にやっている。最初は自分が書く時間を取るために「一緒にやろう」と提案していたが、中学3年生になった今でも続いている。子どもたちはシールを貼ったり好きな言葉を書いたり。「好きを集めるノート」として、現在は部活に関することが多い。
実家では新聞を購読していた、新聞が卓上に置いてあることで会話が広がった。現在は、スマートフォンを1人1台持つようになり、主な情報収集はネットニュースに。気になったニュースを家族のグループLINE(ライン)で共有し、夕食時に話題にする。テスト前の時事問題対策のみでなく、良いニュースも悪いニュースも見ることで、危機管理能力を育てるのに役立つと考えている。
ニュースには、学校では教えてくれないことも、学校での学びにつながることも載っている。「意見を言うのが怖くない世界にしたい」と何でも自分の意見を話し、話せる環境をつくるようにしている。
目にした情報について「本当にそうかな」と考える癖を
ネットニュースでも気になった記事はスクリーンショットで取り置きし、時間のある時に印刷してマイノートへ。習慣に変わりはない。
情報収集の方法に変化はあったが、信頼できる発信元かどうか確認するのは欠かさない。ネット上には、フェイクニュースと言われる信ぴょう性が定かでないニュースもはびこる。災害時などの混乱した際にはデマも拡散される。そんな現代でも、常に自分というフィルターを通じて「本当にそうかな」と考える癖を日頃から身につけていれば、流されることはない。そのためにも配信元を見て、考え、調べることを大切にしている。
記者が足を運んで話を聞き、多様なコンテンツを提供する新聞発のニュースへの信頼は大きい。情報の確かさや信頼性は今も変わらない。決まった形に凝り固まることなく選択肢を増やすこと。新聞を読むと、どのように役立つのか伝えること。それが、新聞が生き残る道だと思う。
◆Emiさん(整理収納アドバイザー)
1981年生まれ。兵庫県出身。暮らしにまつわる情報発信とオリジナル商品の企画販売を手掛ける「OURHOME」を運営する。2022年から音声メディアVoicyで「暮らす働く〝ちょうどいい〟ラジオ」を配信。近著に「今日から変わる わたしの24時間」(大和書房、24年)がある。中学3年の双子の母。
2024年12月3日公開