会社員を経てフリーランスになった経験のあるワーキングマザー、スタイリスト・大草直子さん、整理収納アドバイザー・Emiさん、サンケイスポーツ・竹下聖さんによるスペシャルトークセッション。
レポート後編はお三方のライフプランとキャリアプランの両立をどう叶えてきたのか、そして忙しい毎日のなかでの情報収集のコツについてのエピソードをご紹介します。
(前編はこちら)
目次
- ◆ライフプランとキャリアプランの両立の工夫
- 夫が5年間専業主夫に。家族で決めた選択(大草直子さん)
- ファミリーキャリアという視点
- 夜9時には寝る。自分がご機嫌でいられるための工夫を(Emiさん)
- ◆仕事と子育てに効く情報収集のコツ
- 「波に乗る」ために整理された情報をためておく(Emiさん)
- 同業者のSNSはあまり見ない。人と会って情報収集(大草直子さん)
- ◆仕事と教育に役立つ新聞活用法
- 経済紙の記事からアイデアを生み出すことも(Emiさん)
- 子ども新聞を購読|父がスクラップした記事を家族でシェア(大草直子さん)
- 必要な情報が詰まってる新聞は「果汁100%」だから時短になる(竹下聖さん)
- 時短のコツは、10分で「見出しと記事の1段落目」を読むこと(弟子丸幸子さん)
◆ライフプランとキャリアプランの両立の工夫
弟子丸さん:フリーも母親も代えがきかないだけに大変です。人生のライフプランとキャリアプランを両立させていくのは非常に大変なことだと思いますが、乗り越えてきた秘けつを教えていただきたいです。
夫が5年間専業主夫に。家族で決めた選択(大草直子さん)
大草さん:フリーランスはいただく仕事をすべて受けてしまうと当然その分、業務量があふれてしまいます。自分で選んだにもかかわらず、自分で自分にストレスをかけ続けるという、すごく難しい部分があります。
30代で朝の4時に出て深夜3時まで帰れないというような仕事の仕方をしていたときに、家族皆が本当に疲弊しました。近くに住む実家の親から力も借りていましたが、子どもが全員5歳差のため、学校がバラバラ。雨の日の送り迎えなど本当に大変でした。そんな時に夫が自動車事故を起こし、事故自体は物損で済んだのですが、あらためてこれからどうするか家族で話し合いました。当時、私は大きな雑誌の創刊を抱えており、今までの経験から連日徹夜での仕事が予想されたので、夫に「あなたにまた波が来た時には交代するから、今は私を思い切り働かせてもらえないか」とお願いしました。
夫はベネズエラ人で18歳からずっと働き続けていました。「家族と向き合う時間をもらえるのならすごくうれしい」と言ってくれたんです。当然、住宅ローンも私の判を押し、教育費も食費もすべて負担しました。その覚悟は全然嫌ではなく、むしろ仕事へのエンジンになりました。わが家は夫が5年間専業主夫をしてくれたんです。家族で決めた選択でした。
ファミリーキャリアという視点
大草さん:キャリアってファミリーキャリアだと思うんです。私のキャリアは夫が手伝ってくれたことであり、彼のキャリアは私のキャリアでもあると思います。家族の中で働いている人が2人いるのはものすごい大変なこと。おそらくまだまだ「女性がどこかで我慢するもの、男性は外で思い切り働くもの」というベースがありますよね。とことん話し合うことが絶対に必要です。
ファミリーキャリアとして考えると、私だけが背負ってやらなきゃいけないとか、失敗したら「そらみたことか」と夫に言われるかもしれないとか、実家の母から「そんなに小さい子どもを置いて」と言われる――というような不安が解消されるかもしれません。キャリアって長い。65〜70歳まで働く。60歳まで働いてその後フリーランスになるかもしれない。長いスパンで考えてみてください。ファミリーというユニオンでキャリアを作っていけばいいんじゃないかと思います。子どもだっていつできるかわからない、アンコントローラブルじゃないですか。自分の昇進がいつになるかもわからないし。そんな中で、そのくらいの大きな視点で考えると楽になるんじゃないかなと思います。ただ本当に話し合わないと、後でまたストレスになるのでたくさん話した方がいいですね。
夜9時には寝る。自分がご機嫌でいられるための工夫を(Emiさん)
弟子丸さん:毎日忙しいなかで、タイムマネジメントは働く女性の大きな課題ですよね。
Emiさん:フリーランスは体が資本です。代わりのきかないお仕事がとても多いので、健康管理だけはすごく気を使っています。
フリーランスになった後は、仕事をいただけることがうれしくて、全部受けていました。本当は子どもと一緒に過ごしてできる範囲の仕事をやりたいと思っていたはずなのに、夜まで仕事をしていて。子どもが起きてるうちはパソコンを開けないと決めていたのに開け始め…。
ある時息子が私のパソコンをパタっと閉じたんです。その時に「私は何のために独立するという道を選んだんだろう」と反省したというか、考え直さなきゃと。あれだけ考えて決めたはずなのに、やはり仕事が好きなんですね。どんどんのめりこんでしまって、体調を壊しました。フリーランスの最初の1、2年で働き方を試行錯誤し、夜9時に寝る生活リズムが自分にとってベストと気付きました。今は9時に寝られるように仕事を組んでいます。家事も9時に寝られるようにハードルをさげられないかなとか、みんなで分担することでうまくいかないかなとか。分担も押し付け合うんじゃなくて、やりたくなるような工夫をすればいいんじゃないかなとか。自分がご機嫌でいるための仕組みを作っています。
◆仕事と子育てに効く情報収集のコツ
弟子丸さん:みなさん時代の流れにあった感度の高いお仕事をされているなと思いますが、情報収集はどうされていますか?
「波に乗る」ために整理された情報をためておく(Emiさん)
Emiさん:私は同じ業界の方の情報は見ないようにしています。どちらかというと全然違うジャンルのところから自分の仕事にかけあわせて考えることも大切にしています。
社会人になってから16年間、ずっとノート(マイノート)を書き続けています。65冊になりました。自分の気になったこと、関心事をずっとためていて、頭の中で良いなと思った情報を書き殴っているだけなのですが、心の貯金通帳というか。情報整理しておくと自分に何か起こったときにすぐ波に乗っていけるんじゃないかなと16年の仕事人生の中ですごく思っていて。仕事じゃなくても、例えばPTAとかで「何かお話してください」と言われたときに「私なんて何もお話することないです」ではなく、自分の引き出しを自分で開けられるようにためておくというか。どのタイミングでもできると思うんです。今日からでも、ノート一冊とペンですぐできると思うので、ぜひ気になったことや、今日のお話のメモなど書いてもらえたらいいんじゃないかなと思います。
同業者のSNSはあまり見ない。人と会って情報収集(大草直子さん)
大草さん:私もあまり同業の方のSNSなどは見ないようにしています。比べることが一番つらいです。不安があるなら比べない方がいいです。私は仕事柄ありがたいことにその道のプロにお会いすることがとても多く、一つのトピックに関していろいろな人にお会いしてお話を聞くことで情報収集します。必ずメモをとりますね。お勧めの商品名や本など、全部。例えば口紅など、試せるものはすぐに試します。素直さは前に進む原動力になると思います。できるだけ自分で経験したものを皆さんにお伝えするようにしています。
◆仕事と教育に役立つ新聞活用法
弟子丸さん:新聞はどんなふうに活用していますか。どんな良さがあるでしょうか。
経済紙の記事からアイデアを生み出すことも(Emiさん)
Emiさん:会社員の時からフリーランスになりたての頃もずっと経済専門紙を読んでいました。気になった記事を切り抜いて、自分のことに置き換えてアイデアを考えるんです。産休中は、時間は無いけれど社会との関わりが欲しくて、ざっと見出しだけ目を通したりもしていましたね。一面だけぱっと読んだり。
子ども新聞を購読|父がスクラップした記事を家族でシェア(大草直子さん)
大草さん:一般紙の定期購読はしていませんが、子ども新聞を購読しています。子ども新聞はセグメントされた情報が載っているので私も読むようにしているんです。子育てでも心掛けていることなのですが、他の人(家族)に任せられることはお願いするようにしています。近くに実家があり、父に新聞2紙をスクラップしてもらっています。長女の受験の際の情報収集や、小論文のネタになるものは全てそれに頼りました。真ん中の子はすごく歴史に興味があるので歴史の記事を読むようになっています。そういった形で新聞記事のシェアをしながら活用しています。
弟子丸さん:新聞のスクラップはハサミとのりを使うので、それだけで脳が活性化される気がしますね。竹下さんは作り手の立場からいかがですか。
必要な情報が詰まってる新聞は「果汁100%」だから時短になる(竹下聖さん)
竹下さん:新聞を作るのにどれほどの労力を使って、膨大な取材をした中から削ぎ落とした大事な情報しか紙面に掲載されないことを、肌身を通して感じています。ジュースでいったら果汁羽100%ですね。時間がない時でも見出しだけでも読んでいただけたらそれだけで必要なことがギュッと詰まっているので、今の時代、ネットのニュースを何ページも読むのと比べると逆に時短なのかなと思います。
弟子丸さん:今のような先行きの見えない時代に子育てをするのは本当に大変です。次にどんなことが生きる武器になるのかがわからないですし、次世代の子どもたちの幸せは何が軸になるのかが本当に分からない手探りの状態です。その中で、母親として子どもを露頭に迷わせるわけにはいかない。その道標になるのが、情報なのかなと思います。私もそういう気持ちで日々記事を書いているんです。
時短のコツは、10分で「見出しと記事の1段落目」を読むこと(弟子丸幸子さん)
弟子丸さん:実は新聞の情報量は朝刊だけで新書1冊分に匹敵します。読むのは大変なのですが、新聞社が総力をあげて取材をして、選りすぐった情報が詰まっている製品なんです。子育て中の女性は時間がないですよね。10分もないのではないでしょうか。お伝えしたいコツがあります。見出しと一段落目です。一段落目というのは前文もしくはリードと言います。一段落に情報を全て入れます。新人記者になったときに一番訓練するのもこの前文の書き方です。逆に言うと、前文を読んでいればオッケーです。1日10分というのは、見出しと前文をパーっと読む。これだけで大丈夫です。一覧された情報を見ていくだけで、情報同士が脳の中でつながり、新しい発想を生むのかなと思います。
最後に――
弟子丸さん:転機を決断された中で、楽しいという気持ちがあったり、「これは」と好きになって没頭できるのものを見つけて道を進まれてきたという共通点を、皆様のお話をおうかがいしていて感じました。大変なご活躍をされている皆様ではありますが、一人の女性としてひとつひとつ同じように決断を積み重ねられてきた結果であるのかなとあらためて気付かされました。今日のイベントがみなさまのライフとワークをチョイスするお役にたてば幸いです。
2020年2月20日公開