桐本泰一(きりもと・たいいち)さん 輪島キリモト
大学で工業デザインを学び、文具・オフィス関連の企業に勤めた後、伝統工芸品「輪島塗」の生産・販売を、地元職人と共に手掛ける桐本泰一さん。「輪島キリモト」を継ぎ、漆器の新たな価値を提案する。最近、海外からも「漆(うるし)」の素晴らしさが評価され、活躍の場を広げている桐本さんは、新聞からの情報収集を大切にしているという。
新聞は百貨店と同じ存在|ワクワク感がある
日々の暮らしの中で「使って良かった」と思われる漆器を直接届けたくて、商品を扱ってもらう東京や大阪などの百貨店に頻繁に出向いています。百貨店には優秀なスタッフが目利きした商品があり、見ているだけでワクワクし、子どものころはレストラン街での食事は一大イベントでした。しかし最近、百貨店を訪れる人が減っています。
新聞も若い人を中心に読む人が減っているようですが、私は新聞が好きで、地元紙はもちろん全国紙も購読しています。手に取る印刷物の中では一番大きく、広げてみると様々にレイアウトされた見出しが目に入り、短時間でいろいろな分野の情報をキャッチできます。取材のプロである記者の皆さんが、地元はもとより全国、全世界の情報を広く集めて届けてくれます。外出時にタブレットで新聞を読むこともありますが、新聞の魅力は、工夫が凝らされた紙面レイアウトにあります。見出しの大きさに強弱があり、厳選された写真は印象に残るため、紙の新聞を読むとワクワクします。
ビジネス巡る環境に敏感でいるために新聞を読む
最近、私たちの漆器を多くのメディアが取り上げてくれるようになりました。記者の方が気持ちを込めて書いてくれるのでうれしくなり、ついついこちらから材料を提供するうちに、良好な人間関係が生まれているのかもしれません。地元紙や全国紙が取材してくれることで、多くの人が輪島塗を知るきっかけになっています。
先日、「将来性や貢献度の高い中小企業への融資を推奨する」という記事を見ました。国や自治体がどういう政策をとるかで商売が変わるため、ビジネスを取り巻く環境に敏感でいるためにも新聞を定期的に読む大切さを痛感しています。
輪島塗と新聞に共通する「ものづくりへの思い」
輪島塗は、実に多くの工程を手間暇かけて熟練した職人が作り上げます。対面でお客様に説明して、ようやく手に取ってもらえます。インターネットでも手軽に情報を仕入れることができますが、新聞記者が丁寧に取材し、こだわり抜いた情報だからこそ価値があります。自分と同じ、ものづくりへの思いにも共感しているのかもしれません。
2018年8月28日公開