学生生活&就活に役立つ2026年01月19日

「とある男が授業をしてみた」の葉一さんと新聞記者が教える 就活の情報収集に役立つ新聞の読み方

経済産業省のデータでは、日本の企業数は約370万に上ります。この中から、自分にぴったりな職場を探すのが就活…と考えると気が遠くなりそうですが、自分のやりたいことを見つけるのも、選択肢を広げるのも、全ては「信頼できる情報」に触れることが第一歩。3回のキャリアチェンジを経験したユーチューバーの葉一さんと、現役の新聞記者・中川雅晴さんが、就活の情報収集に役立つ新聞の読み方を伝えます。

◇話を聞いたのはこちらの2人

葉一さん
東京学芸大学卒業後、営業職や塾講師を経て独立。2012年にユーチューブチャンネル「とある男が授業をしてみた」を開設し、小学生~高校生向けの授業動画や悩み相談動画を投稿している。

 

中国新聞社 東京支社編集部記者
中川雅晴さん
2007年に入社。整理部、広島県内の支局、本社報道部を経て、2021年から東京支社編集部。首相官邸担当として政権与党を取材する。

 

やりたいことを見つけたいなら「生きた選択肢」を増やそう

――葉一さんはこれまで、どのようなキャリアを歩んできたのでしょうか。

葉一さん:僕は1985年生まれで2児の父です。現在ユーチューバーとして活動していますが、これまで3度キャリアチェンジをしています。恩師との出会いがきっかけで、高3の時に「教師を目指そう」と心に決めて大学に進学しました。でも大学では「この視野の狭さで教師になっていいのか?」と悩みました。参加していたNPOの活動で外の世界を見て「もっと経験を積んでから教師として子どもたちのもとへ行こう。まずは修業だ」と。小中高の教員免許は取りましたが、新卒では営業職で企業に就職しました。7か月勤めた後に、塾講師に転身しました。子どもたちと接する中で、家庭の事情で教育格差が生まれる現状を見聞きし、「子どもが自分の意思でアクセスできる場を作りたい」との思いが募り、ユーチューバーとして独立しました。

「知る」「調べる」からすべては始まる

――就活生にとって「やりたいことが見つからない」というのは大きな悩みの一つです。インターンシップ先やエントリー先を決める際はどんなことを意識したらよいでしょうか。

葉一さん:結局、就職も転職も、まずは世の中にどんな仕事や企業があるかを知っていなければ行動には移せません。知ること、調べることを通じて「生きた選択肢」は広がります。興味があるなしにかかわらず、「いろいろなことを知りにいこう」という意識を持つことが大切です。

――選択肢を広げるための情報収集は、どのように進めるのがよいでしょうか。

葉一さん:最近はSNSや生成AI(人工知能)といった手軽な情報ツールもあります。こうしたツールは情報収集に大いに活用したらよいと思います。でも、情報が多いからこそ迷いますし、こうしたツールには「フェイク情報」が多く紛れているというリスクもあります。今は「タイパ」が重視される時代ですが、無駄だったかどうかは行ってみないとわからない。「これ何だろう?」という情報を見つけたら、二の足を踏まずに調べてみてください。自分の興味のアンテナを信じてください。誤った情報に惑わされないためにも、SNSAIだけに頼らず自分で調べることが大切です。

また、SNSで匿名や個人名義で発信される投稿には、発信者の主観に基づく単なる意見も多いです。ニュースや身の回りで起きた出来事について批判するだけの投稿も目立ちます。自分が満足したことってネット上になかなか書き込みませんよね。ネットにはネガティブな感情があふれやすい性質があります。人間は、そうした感情に影響されて「これが私の意見だ」と錯覚しがちですから、SNSやコメント欄の感情的な意見に安易に流されないよう気をつけた方がよいです。「コメント欄をすぐ見ないようにする」のがおすすめです。

新聞には「自力でたどり着けないニュース」がある

――こうしたリスクを回避するにはどうしたらよいのですか?

葉一さん:私は学生の頃から新聞を読んでいます。新聞記事の多くは感情的な要素を排した事実だけが書かれているので「自分で考えるための材料」を得やすいのがメリットです。新聞を読むと、世界で日々起きている出来事を幅広く知ることができます。「自力でたどり着けないニュースにたくさん触れることができる」とも言えます。毎日読んでいると、世の中の流れをつかむことができますよ。

――新聞の特徴について、中川さんにもお聞きします。

中川記者:新聞は前日までに国内外で起きた「世の中の人々が知っておくべきニュース」がパッケージになったニュースメディアです。ネットだと自分が知りたい情報ばかりにアクセスしがちですが、新聞には経済や企業の動向のほか、スポーツ、文化、政治、行政、事件・事故まであらゆる情報が網羅されています。新聞で幅広い知識を得ることで興味の範囲が広がり、職業選択にも役立つと思います。

――2021年の経済産業省のデータでは、日本の企業数は約370万です。就活生はこれだけの企業の中から、自分に合った職場を探すわけですね。新聞は職業選択や企業研究にどう役立つか、もう少し詳しくお聞かせください。

中川記者:私は広島県の新聞「中国新聞」で記者をしています。特定の地域で発行されている新聞は「地方紙」と呼ばれていて、地域の情報を重点的に紙面に載せています。地元の情報を手厚く知るなら、地方紙がよいかもしれません。

例えば、広島にはマツダという大手の自動車メーカーがあります。でも、自動車はマツダの力だけで作っているのではありません。自動車を作るために必要な部品は多種多様で、それぞれ異なる会社が製造しています。新聞の経済面を読めば、こうしたマツダの車を作るのに不可欠な中小企業のことも分かるようになりますよ。経済活動に関する視野が広がって、選択肢も増えます。

とはいえ、情報収集に活用できるメディアは新聞だけではないのも事実です。ネットで情報収集する際は、信頼できる情報か、情報の出元を確認することをおすすめします。ネット上の無料ニュースサイトには、新聞社が取材・発信した記事も実はたくさんあります。

「新聞を読んでいる」は面接でもアピールポイントに

――新聞はその後の面接といった採用試験でも役立つと聞いたことがあります。

中川記者:私は就活生の時、中国新聞のほかに地元の金融機関も受けました。採用面接で、自己PRとして「地元の新聞を読んでいる」と話しました。サークルやゼミの話をする就活生が多い中で、面接官は「どうして新聞を読んでいることをアピールするのか?」と不思議そうでしたが、その金融機関が地域密着を掲げていたことから「日頃から地元の中小企業の情報が載っている新聞を読んで情報収集する習慣が身に付いている」とアピールしたのです。

「大企業」と言われる会社は世の中を見渡せばごく少数で、地域にはたくさんの小さな事業者やお店が存在しています。地元の中小規模の企業についても情報を得ることで、他の就活生と差がつけられると思います。

葉一さん:私も学生時代から新聞を読んでいて、本当に良かったと思っています。新聞に目を通すと、テレビやネットニュースで流れてこないことも目に入ってきます。先ほども話した通り、記事の多くが客観的な事実のみで作られていて、記者の主観や感情が入り込んでいないことも新聞が好きな理由です。客観的な事実に基づく情報を提供してくれるメディアに触れて、そのニュースに対する自分の考えを持つことが大切です。社会に出ると、自分の考えを自分の言葉でアウトプットできる能力は、どの業界のどんな会社に就職しても重宝されます。

新聞記者はこうやって「情報の裏づけ」を取っている

――葉一さんから「新聞は事実に基づく情報を提供してくれる」という話がありました。中川さんにお聞きしますが、新聞記者はどのようにして「その情報が事実かどうか」を確認しているのですか?

中川記者:私たちは日々、いろんな人から話を聞きます。どういう背景でその発言があったのか、なぜ事件が起きたのかなどをいろんな角度から取材し、その結果を照らし合わせることで見えてきた事実を報じています。取材って意外と大変なんです。

一つ例を挙げますね。2019年の参院選で、元法相の河井克行さん、元参院議員の河井案里さんの夫妻が広島県内の地方議員や後援会員ら100人に現金を渡していた「選挙買収事件」を取材したことがあります。警察や検察に取材して捜査の進展を追うだけではなくて、現金を受け取ったとされる人をはじめ選挙に関わった一人一人に当たって直接話を聞き、選挙買収の全容を明らかにすることを目指しました。この取材では、捜査当局が解明できなかった裏金の原資にも切り込むことができました。その舞台裏を収録した本が大手出版社から出版されています。

情報を右から左へ流すのが記者の仕事ではないんです。うわさ話レベルのものや、断片的な情報をそのまま記事にすることもありません。その情報が正しいかどうかを、別のさまざまな取材で得た情報と突き合わせて、裏づけが取れたら記事にして報じる、というステップを踏んでいます。

新聞は「情報収集にかける時間を調整しやすく作られている」

――新聞は、記者が手をかけて精査した情報を伝えていることがわかりました。とは言え、読み慣れていないと新聞を読むのは難しく感じます。

中川記者:紙の新聞は1面にその日の一番大きなニュースが載っています。ページをめくると、社会面、政治面、スポーツ面とそれぞれジャンルごとにページが分かれています。

まずは自分の興味のあるテーマを一つ見つけて、そのページから読むことをおすすめします。時間がない方は、1面の見出しだけチェックするのでもよいです。新聞の見出しは、記事を書く人とは別に、専門の編集者がつけています。見出しだけ読んでも「何が起きたか」はわかるし、記事を読めば詳しいことがわかります。新聞は、読者が情報収集にかける時間を調整しやすいように作られています。

日常会話の糸口にできそうだな、と思う記事から読むという方法も就活に役立つかもしれません。例えば「ガソリン減税法 成立へ」「カキ異変 大量死」などの記事を読んだ後、自分の暮らしにどう影響するのか意識してみるのもよいでしょう。実際に近くのガソリンスタンドで値段が下がったり、飲食店でカキフライが提供されなくなっているのを知ったり。新聞を読んでいなかったら何気ない日常としてやり過ごして、そもそも変化に気づかなかったかもしれません。社会の動きが自分の身の回りでどんな変化となって現れているのか。その「気づき」を自分の中で増やしていけば、自然と会話の幅が広がり、就活にも役立つと思います。

新聞各紙はニュースをストレートに伝える記事だけではなく、その中で書き切れなかった現状の課題や展望を分かりやすく整理した解説記事も掲載しています。大切なのは無理せずに読み続けること。自分が空いている時間を活用し、知らなかった分野の知識を得るツールとして読んでもらえたらうれしいです。

葉一さん:私も学生時代は活字に苦手意識があったので、パラパラとめくって興味を持った記事を選んで読んでいました。新聞は自分流の読み方を見つけて、気負わず少しずつ読むのがおすすめです。

新聞読むなら紙・デジタルどちらでもOK

中川記者:新聞と聞くと紙のイメージがあるかもしれませんが、携帯電話などで見られるデジタル版サービスも充実しています。通学中の電車で気軽に読んでいただけます。詳しく知りたい企業があれば、過去の新聞記事から検索して、その企業に関する記事を見つけることができます。志望企業の情報を効率よく集められますよ。新聞社によっては、若者向けに関心の高いテーマの記事を集めたアプリを開発しています。詳細はぜひ、調べてみてくださいね。

(この記事は2025年11月に開いたトークショーを基に構成しました)