【いきものがかり・水野良樹さんに聞く】問題の解決を目指す情報が欲しい

ソングライター、音楽グループ「いきものがかり」メンバー 水野良樹(みずの・よしき)さん

1982年生まれ。神奈川県出身。99年にいきものがかりを結成し、2006年にシングル「SAKURA」でメジャーデビュー。21年に新聞連載をもとにしたエッセー集「犬は歌わないけれど」(新潮社)を刊行。清志まれの筆名で作家としても活動している。

23年10月、新聞広告統一PRキャンペーン「新聞で紡ぐ希望のうた」のテーマソングとして、いきものがかりが歌う「誰か」を作詞・作曲した。

どんな価値観の人にも曲を聴いてもらうために


 街で暮らす多くの人たちに音楽を届けたい。どの年代の人にも、どんな価値観の人にも聴いてほしい。だから、世の中で起きていることや問題について、バランス良く知りたいと考えている。

 特別なことをしているわけではない。情報収集に最もよく使うのはインターネットだ。ただ、ネットの記事を読む際には、新聞、テレビ、週刊誌、ネットメディアと、発信元は確認する。

 

「自分が知っていることは限られている」

 

 今のネット社会では、特定のアルゴリズム(計算方法)によって興味のある情報が流れてくる。世の中の出来事について、自分が知っていることは限られている、という前提を忘れないようにしている。自分の考えに偏りがあるかもしれないということも。だから、自分の意見と正反対の記事や意見をあえて読む。感情的ではなく論理的で、しっかりとした根拠があり、議論の勝ち負けではなく問題の解決を目的としている情報が欲しい。

 こうした記事に触れると、自分の意見が偏っていたと気付かされ、立ち位置を修正できたり、考えが深まったりすることが少なくない。

 

新聞は、丹念な取材が強み

 

 自分たちのグループについて報じられたとき、「報道された内容と事実がこんなに違うものか」と思ったことがある。やはり事実の確認をしっかりしているメディアの方が信頼できる。

 時間と労力をかけて取材することが新聞の強み。生活の中に新聞があって、新聞が届くことをリズムにしている人たちがたくさんいる。「デジタルネーティブ」と呼ばれる若い世代も、ネットにあふれた真偽不明の情報の危うさをわかっている。閲覧数を競い合うネットの潮流に合わせてセンセーショナルな記事を書くのではなく、読者のために、丹念に取材を続けてほしい。