専門家が教える子育てストレスの解消法7選|3つの予兆に要注意

育児に追われる日々に、ストレスを感じているママやパパも少なくありません。ストレスを解消したいと思っていても、忙しい毎日では自分のケアを後回しにしてしまいがちです。疲れがたまると、イライラしたり気分が落ち込んだりと、心と体に影響が出ることもあります。

日本メンタルヘルスケアサポート協会代表理事の奥江裕理さんに、自宅や職場で簡単に実践できるストレス解消法や、ストレスを感じた時に現れるサインについて詳しく話を聞きました。

 

日本メンタルヘルスケアサポート協会代表理事 奥江裕理(おくえ・ゆうり)さん日本メンタルヘルスケアサポート協会代表理事 奥江裕理(おくえ・ゆうり)さん

 

ストレスは捉え方次第でプラスにもマイナスにも作用する

 

―― そもそもストレスとはどのようなものだと考えられていますか。

 

ストレスは学説的に、外部からの刺激によって身体に生じた反応とされています。この反応は、自分が感じた刺激の捉え方によって異なります。ストレスは捉え方次第でプラスにもマイナスにも働きます。

例えば、上司に叱られた時「腹が立つ」と感じるのか、「自分の成長のために教えてもらっている」と思うのか、捉え方によってメンタルは大きく変わりますよね。また、叱られたことを前向きに捉えてエネルギーに変える人もいます。そのため、ストレスとは「その状況をどう捉えるのか」「どう反応するか」で変わってくるものだと考えています。

私たちは日々の暮らしの中で、マイナスのストレス反応をどう扱っていくのかが大きなポイントになります。例えば、程よい緊張感は、リスク回避や集中力の向上につながりプラスのストレス反応となりますが、強い緊張感により頭が真っ白になったり声が震えたりするのはマイナスのストレス反応だと言えます。ストレスを感じないようにするのは難しいです。重要なのは「ストレスを感じている」と認識し、適切に対処することだと思います。

 

ストレスとは「その状況をどう捉えるのか」「どう反応するか」で変わってくるもの

 

 

―― ストレスを引き起こす原因には何があるのでしょうか。

 

予期しない出来事が起こると、それがストレスの原因になります。例えば、仕事中に突然子どもが通う保育園から電話がかかってくるというのは、子育て中のママ、パパにありがちな一例です。こうした状況の変化によって感情が揺れ動き、それが身体や心にストレス反応として現れます。

ストレスを感じたら自分の感情を認識し、「こういう状況に置かれているから、こう感じているのだ」と冷静に捉えることが大切です。

育児でストレスを感じているなら「子どもがストレスの原因だ」と思い込むのではなく、「子どもとの関わり方のどこに自分がつらさを感じているのか」を客観的に見つめてみます。育児に追われ自分の時間が取れない状況がストレスの原因だとわかれば、適切な対策がしやすくなります。

原因をはっきりさせないと、子どもを悪者のように感じてしまう恐れがあるんです。ストレス解消法を考える前に、まずは原因をしっかりと把握することが重要です。

 

予期しない出来事が起こると、それがストレスの原因になる

 

 

ストレスを感じた時に現れる3つのサイン

 

―― ストレスを感じるとどのような症状が現れるのでしょうか。

 

私たちは、無意識のうちにストレスをため込む「つぼ」があると考えています。このつぼは、嫌な気持ちやマイナスの感情がたまっていくところで、いっぱいになるとあふれ出してしまうんです。

例えば、怒鳴ってしまう、誰かに八つ当たりしてしまうのは、つぼからあふれた状態であり、つまり我慢の限界を迎えたということになります。

つぼにストレスがたまると、身体や心にストレスサインが現れるので、そのサインを見逃さないことが大切です。ストレスサインには3つの特徴があります。

 

身体に現れるサイン――じんましん、不眠、頭痛、肩こり

 

ストレスがたまると、じんましんや吹き出物がでることがあります。また、眠れなくなったり、慢性的な頭痛や肩こりが続いたりするのも身体に現れるサインです。

 

行動に現れるサイン――集中力が下がる、ミスが増える

 

行動にも影響が現れます。集中力が続かない、物忘れが増えるなど脳の機能が一時的に低下しやすくなります。時間を間違えやすくなる、誤字脱字をしやすくなるなど、ミスが増えることも行動変化のサインです。

ただ、暴飲暴食などはストレスサインなのか、ストレスを解消するための行動変化なのか判断が難しいことがあります。その違いは、その行動に意識があるかどうかです。例えば、暴飲暴食を「楽しい」「自分へのご褒美」として自覚的に飲み食いしているならストレス解消法と言えます。しかし、後で罪悪感を感じるほどの無意識の行動であればストレスサインだと考えられます。

 

精神状態に現れるサイン――自分を責める、怒りっぽくなる

 

ストレスをため込むと、精神面も不安定になります。自分を責めたり怒りっぽくなったり、感情的になることが増えるのが特徴です。精神的に影響が現れる時には、ストレスが限界に達している可能性が高いでしょう。

そのため、身体や行動に出るサインを見逃さないことが重要です。自分の身体が「休憩すべき」や「リラックスしよう」と教えてくれていると考えて、ゆっくりと対処しましょう。

 

ストレスサインは身体、行動、精神状態に現れる

 

 

ママ・パパアンケート:時間・お金に余裕がない――がストレスのもと

 

は、子育て世代のママ・パパはどのようにストレスを解消しているのでしょうか。子育て経験のある20〜40代300人にアンケートで聞きました。

この結果によると、半数以上の人が時間に余裕がない、金銭的な余裕がないことにストレスを感じているようです。

 

子育て経験のある20〜40代は時間に余裕がない、金銭的な余裕がないことにストレスを感じている

 

また、ストレスを解消するために「定期的に休息や休憩をとる」「好きなものを飲む・食べる」といった回答が多く見られました。自由な時間が少ない中でも工夫してリフレッシュしていることがわかります。

 

ストレスを解消するために「定期的に休息や休憩をとる」「好きなものを飲む・食べる」といった回答が多い

 

 

子育て世代におすすめの7つのストレス解消法

 

ストレスを予防する方法について、奥江さんに教えてもらいました。

 

ストレスを予防するには「ほっとする瞬間」や「達成感・幸福感を得る瞬間」を作ることが重要

 

①達成感・幸福感を得る瞬間を作る

 

ストレスを予防するには「ほっとする瞬間」や「達成感・幸福感を得る瞬間」を作ることが重要です。

先日ある企業の研修会で、食事や運動を取り入れたストレス解消法を教えた際、「どれくらい運動すれば良いのか?」という質問がありました。メンタルヘルスの観点では「ご自身で基準を作ってください」と伝えています。どれだけやれば「ほっとした感覚になれるのか」「どこで達成感を得られるか」は人によって異なります。プラスの感情に基づいて、自分で運動量を決めることが大切です。

例えば、最寄りのコンビニまで歩くことも、数十分先の公園まで足を伸ばすことも、自分が達成感や幸福感を感じられるなら適切な運動です。

 

②リラックスしていることを意識する

 

実は「ほっとする」「リラックスする」感覚は、自分自身で意識しないと感じにくいものです。だからこそ、それを感じるための時間を意識的に作ることが大切です。

例えば、お風呂に入る時や眠る時に、ふと仕事のタスクや明日の予定が気になって頭から離れなくなる人は多いと思います。無意識のうちに、自分を緊張状態に置いてしまうのです。そんな時は「今はリラックスする時間だ」と意識するだけで、休息の効果は何倍にもなります。

 

③自分の頑張りを認める「今日はこれでOK」

 

自分の頑張りを認めてあげることも大切です。

例えば、寝る前に「今日も良く頑張った」と声に出して自分に伝えてあげてください。たとえ最悪の一日だったとしても、それでも頑張った自分を認めてあげることが大切です。「良くやった」「今日はこれでOK」と自分に言い聞かせる習慣をつけましょう。

人はどうしてもできなかったことや欠けている部分に目がいきがちです。しかし、実際にはできていることがたくさんあります。例えば、仕事はきちんとこなしているし、家事も十分にできている。どんな小さなことでも良いので、できたことに目を向けるのが大切です。

 

④視点を変えて相手のプラスの面をみる

 

子育て世代のママやパパは、日々の育児や家事に追われ、リラックスする時間が取れないことが多いですよね。日々の疲れが蓄積すると、それがストレスに変わってしまうこともあります。

子どもが言うことを聞かない、パートナーがやった家事が不十分だったなど、できていない部分に目が向くとストレスにつながります。そんな時は、パートナーや子どもの頑張っている面に目を向けると、自然と幸福感や満足感が湧いてくることがあります。

視点を変えて、日常の当たり前を見直し、自分と向き合って幸せを感じる時間を持つのも良いでしょう。

 

⑤たまった感情を吐き出す――人に話す、日記をつける

 

たまった感情を吐き出すことも重要です。誰かに話を聞いてもらうことはとても効果的です。その際は、単に状況を説明するのではなく、その時に感じた感情も一緒に吐き出しましょう。

話を聞いてくれる相手がいない時は、紙に感情を書き出してから捨てるのも効果的ですよ。日記をつけるのもよいでしょう。文字に書き出すことで感情を整理でき、リフレッシュできます。

ポイントは思いっきり感情を吐き出すことです。ネガティブな内容でも構いません。感情を抑え込まず、誰かに話したり、文字に書き出したりすることで心がすっきりします。我慢して「こんな感情を抱いてはいけない」と思うのではなく、感情を解放することが大切です。

 

⑥深呼吸で自律神経と気持ちを整える

 

私たちの身体にはストレスや緊張を感じる交感神経と、リラックスを促す副交感神経があります。

仕事で考え事をしていたり、私生活でもスマートフォンに没頭していたりすると交感神経が優位に働きやすくなると言われています。その結果、体が常に緊張状態にあり、疲れが取れにくくなったり、イライラしたりします。自律神経のバランスを整えるために重要なのは、副交感神経が優位になるリラックス時間を意識的に作ること。そのために最も手軽で効果的なのが、深呼吸です。

まずはリラックスした状態で、呼吸だけに意識を向けましょう。1分間でも効果があります。ゆっくりと深い呼吸を意識することで、副交感神経が活性化し、体がリラックスします。

緊張する場面や、息が速くなっていると感じた時は深呼吸をするだけで、副交感神経が優位になり、自律神経のバランスが整います。このように身体を一度落ち着かせることは、ストレス解消にとても効果的です。

また、感情のコントロールも可能になります。人は不快だと思ったことに対して反射的に不安や怒りを覚えますが、深呼吸をしてワンクッション置くことで、冷静さを取り戻せるのです。一時的でも不安や怒りから離れることが大切です。

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⑦新聞を読んで視野を広げる

 

新聞を読むと思考が整理されるため、ストレスケアに役立ちます。新聞には自分の興味・関心の枠に留まらず幅広い情報が載っています。そのため、思いがけない新しい情報に触れることができ、自然と知識が増えます。

例えば「こんな本があるんだ」とか、「こんなことが解明されたんだ」といった新たな発見は、達成感や満足感にもつながります。また、思考が整理されるため、ストレスケアに役立つんです。

さらに、自分の知識を広げるだけではなく、他の人とのコミュニケーションにも効果的なんです。新聞を読むことで子育てに関する話題や自治体の取り組みなどを知ることができ、パートナーや家族・友人との会話や職場での話題作りにも役立ちます。コミュニケーションが増えると、自分の知識に自信がつき、自己肯定感を育むこともできます。

 

新聞を読むと思考が整理されるため、ストレスケアに役立つ

 

 

新聞の「くらし面」「教育面」からヒントを得る

 

―― 先ほど新聞がストレス解消のおすすめツールだと紹介いただきました。仕事も子育ても忙しくて読む時間がない…という方も多いと思うのですが。

 

忙しい中でも新聞を読む時間帯を工夫することで、無理なく習慣化できますよ。読むのに適した時間帯として、家族がまだ起きていない早朝の静かな時間や、子どもの昼寝中、子どもが寝静まった夜間などが挙げられます。子どもが文字を読める年齢になってきたら、夕食を終えたリラックスしている時間帯などに家族みんなで読むこともできますね。

時短につながる新聞の読み方として、まずインデックスや紙面構成を確認することをおすすめします。これにより、全体のトピックを俯瞰(ふかん)し、関心のある記事を効率的に探し出すことができます。また、ページをめくるうちに予想外の有益な情報に出合うことも多々あります。そうした記事を見逃さないためにも、全体にサッと目を通すことはとても重要です。

 

新聞の読み方として、まずインデックスや紙面構成を確認することがおすすめ

 

特に子育て世代におすすめなのが「くらし面」です。ここには、家事の時短テクニックや育児の悩みに対する専門家のアドバイスなど、日々の暮らしや育児に役立つ実践的なヒントが豊富に掲載されています。時間に余裕がある時は「教育面」や「社会面」「経済面」にも目を向けてみてください。広い視野を持つことができ、将来の生活や子どもの教育に役立つヒントが得られるかもしれません。

気になった記事について家族で話してみるのも、コミュニケーションを活性化させる良いきっかけになります。まさに新聞は、家庭で実践しやすいストレス解消のツールの一つと言えます。

 

 

ストレスサインを見逃さず、早めに解消しましょう

 

今回はストレス解消の具体的な方法について、日本メンタルヘルスケアサポート協会代表理事の奥江 裕理さんに聞きました。

ストレスがたまると、身体、行動、精神面にサインが現れます。そのサインを見逃さず、早めに解消することが大切です。リラックスできる時間を意識的に作り、深呼吸で自律神経を整えるなどのストレス解消法を取り入れるのがおすすめです。

家族の暮らしや育児の情報を新聞で効率よく収集すること、記事を読んで新しい気づきを得ることもストレス解消につながるとの話もありました。

子育て中のママやパパは家事や子育てに忙しく、自分のことを後回しにしがちです。心身ともに健康を維持するために、自分のケアも忘れないようにしましょう。

 

日本メンタルヘルスケアサポート協会代表理事 奥江裕理(おくえ・ゆうり)さん日本メンタルヘルスケアサポート協会 代表理事 奥江裕理(おくえ・ゆうり)さん

高校在学中に、重度の精神疾患で入院。退院後、北里大学を経てカウンセラー養成専門機関で心理学を学ぶ。トレーニングを積んだ後、日本メンタルヘルスケアサポート協会を設立。メンタルヘルスやハラスメントへの理解・対策を促すための講演・研修を手掛ける。

2024年10月24日公開
※インタビュー中のトピックは取材時のものです