コロナ禍でも中学受験は待ったなし。出題範囲や難易度、出願動向の変化など、受験への影響を不安に思われるご家庭も多いことでしょう。中学受験の専門家であり、プロ家庭教師の安浪京子さんに、中学受験に役立つ新聞活用術について話を聞きました。
目次
新聞は活字の嵐!興味の外にある情報が飛び込んでくる
好きな時に読めて、見出しが自然と目に入る
── 中学受験の専門家として家庭教師をされていますが、中学受験に新聞は必要でしょうか?
ぜひお薦めします。デジタルデバイスの普及が進んでいますが、中学受験をするご家庭は意識が高いので新聞をとることが多いです。
紙の良いところは、好きな時に紙面を行き来したり、見出しが自然に目に入ってきたりするところです。デジタルデバイスは検索したものしか出てきませんよね。その点新聞は、届いた瞬間から活字の嵐です。自分の興味以外のことも満載です。本当にいろいろな情報が飛び込んできます。
入口は四コマ漫画でもOK
活字離れが進んだ子どもに大切なのは、まず慣れること
── でも、子どもは四コマ漫画など好きなものしか読もうとしません。
新聞は一見、難しそうに見えますよね。漢字も多いですし。それに最近の子どもは活字離れがひどくて読めないのです。でも、最初は読めなくても構いません。入口は四コマ漫画や連載ものでも十分だと思いますよ。
── 親が「読ませよう」と思いすぎているのでしょうか?
皆さんつい、「せっかくお金を払って新聞をとったから、受験に生きる力に結び付けたい」と肩に力が入ってしまいます。だけど、大切なのはまず新聞に慣れること。毎日自分のための新聞がくるという環境を子どもに作ってあげることが大切です。毎日旬のものが届くというのが新聞の魅力ですから、毎日これだけの活字が生まれているということを子どもの意識に植え付けることから始めればいいと思います。
まず親が新聞を読んで、面白がる
「親が活字に触れているのが当たり前」の環境を整える
── そこから子どもにもっと新聞に興味をもたせるコツはありますか?
先に親が面白がることですね。自分が新聞を読まないのに、子どもに読めというのは無理があります。蔵書数と子どものIQは比例するという話があるように、やはり新聞などの活字に親が日頃から触れているのが当たり前という環境を整えることが何より大切です。親が新聞を読んでいる姿を子どもに見せないと、子どもは食いつきません。
──まずは親から、ですね。
子ども新聞を親子で読むのもおすすめ
興味を持った記事を選ぶだけで、力がつく
子ども新聞でもいいので、親も子どもと一緒に読むのがいいと思います。その上で、「気になったものはどれ」と子どもに聞いてみましょう。あるいは、見出しだけを見せて、「この中でどの見出しに興味をもった?」と聞くのでも良いと思います。中身がわからなくても、お子さんが興味のもったものを選んでもらうのです。見出しを見るということ、また興味のあるものを選ぶということだけでも、かなりの力がつきます。
「どうしてその記事に興味を持ったの?」と聞く
──選ぶということが入口なのですね。
子どもが選んだら、「へえー、どうして興味をもったの?」と聞いてあげて下さい。聞くと嫌がる子もいますから、そこは匙(さじ)加減で。そして、お子さんがどうしてそれを選んだかを聞いたあとで、親御さんも興味をもったことについて話しましょう。
親子で納得できるポイントを見つける過程が思考力を鍛える
もっと慣れてきたら、お子さんが興味をもった箇所を親御さんが読んであげる、説明してあげる、感想を言い合うなど、いくらでも深めることはできます。子どもが分かるように説明するのは難しいけれど、親子で腑(ふ)に落ちるところを見つける過程が子どもの思考力を鍛えます。まずは、親子で興味のあるトピックスをお互いに共有し合うところから始めたらいかがでしょうか。
親子の会話が思考力や読解力を育む
大人の語彙で会話することが重要
──新聞を介して親子でコミュニケーションをとるということですね。
そうです。よく「どうやって子どもの思考力を鍛えるのですか?」と聞かれますが、「親子の会話です」といつも答えます。
──思考力は親子の会話で身につくんですね。
読解力をつけるのも、日常の中の親子の会話に尽きるんです。読書もいいですが、子どもはライトノベルなど自分の好きなジャンルしか読まない傾向があるので、世界は意外と広がりません。
だから、親が子どもを子ども扱いしないで、大人の語彙を使って会話することがとても有効です。
中学受験に必須なのは国語力!
──親子の会話で語彙力をひろげるのですね。
中学受験で絶対に必要なのは国語力です。入試は紙に日本語と数字を書かせますし、面接はコミュニケーションです。コミュニケーションに語彙力は必須です。相手に伝わるように主語や述語をはっきり明確に打ち出して話せるか、適切な言葉を使えるか、そこが原点ですから。
──安浪先生は算数が専門ですが、国語の重要性を痛感されているんですね。
算数を解くのもまず国語力がないとできません。私もこの仕事をやっていく中で、「分かりやすい」と皆さんにおっしゃっていただけますが、それも分かりやすく伝えるコミュニケーション能力をもっているからだと思います。私の一番の強みですね。
新聞はコミュニケーションに役立つ最高のツール
労を惜しまず、子どもを向き合えるかが問われる
──子どもとのコミュニケーションはワンパターンになりがちです。
基本的に面倒くさいですからね、コミュニケーションは。子どもと向き合うことが面倒くさくてスルーしているご家庭のなんと多いことか。どこまで惜しまず子どもと向き合えるかですよね。親子で会話があるご家庭は、本当に仲良しです。
小学生の息子と一緒に、新聞の株価欄で「株売買の疑似体験」
── 新聞はコミュニケーションに使えますか?
私にも小学校4年生の息子がいますが、新聞の株価欄を家族全員で見て楽しんでいます。「どこの会社にする?」って言いながら一人ひとり会社を選んで、毎日そこの株が上がった、下がったって言いながら、株売買の疑似体験をゲーム感覚で楽しんでいます(笑) このように、新聞は親子の話題作りのための最高のツールだと思います。
安浪京子(やすなみ・きょうこ)さん
1976年、岐阜県生まれ。神戸大学を卒業後、関西、関東の大手進学塾で中学受験生に算数を指導。
プロ家庭教師として中学受験算数を20年近く指導。中学受験専門プロ家庭教師、親子のメンタルサポートを提供する
『株式会社アートオブエデュケーション』を設立。オンラインサイト『中学受験カフェ』主宰。
きめ細かい算数指導とメンタルフォローで毎年多数の合格者を輩出している。
中学受験に関するセミナーを多数開催。中学受験に関する著書多数。
2022年5月31日公開