電話応対が怖い人のための言葉遣いの基本&実践マニュアル
社会人のキャリアに役立つ2026年01月23日

電話応対が怖い人のための言葉遣いの基本&実践マニュアル

電話応対に苦手意識を持つ若手社会人は少なくありません。顔が見えない不安や、言葉遣いへの迷いから、「失敗したらどうしよう」と身構えてしまう場面も多いのではないでしょうか。でも、電話応対は考え方や言葉の使い方を少し工夫することで、誰でも身につけられる技術です。電話応対コンクールで数々の優勝経験があり、電話応対のプロである三澤教子さん(ケーブルテレビ株式会社)に、苦手意識の正体、相手に伝わる話し方や言葉遣い、今日からできる実践法について話を聴きました。

電話応対が苦手と感じる理由|不安の正体をひもとく

理由1:相手の顔が見えないから

ーー電話応対に苦手意識を持つ若手社会人が増えています。どういった要因があるのでしょうか。

ケーブルテレビ株式会社カスタマーサービス本部コンタクトセンター課長・三澤教子(みさわ・のりこ)さん

顔が見えない電話でのやりとりは、対面であれば自然に読み取れる表情や空気感、視線といった情報が得られません。そのため、相手がどう受け止めているのかを感じ取りにくく、声のトーンや話す速さ、言葉の選び方に迷いやすくなります。とくに若手社員は、この点で不安を感じやすいのではないでしょうか。

若手社員の多くは「相手の役に立ちたい」という気持ちがとても強く、学んだ知識を誠実に伝えたいと考えています。ただ、経験や言葉の引き出しがまだ少ないため、どの順番で、どの言い回しを使い、どのくらいのトーンやスピードで話せば良いのか判断に迷ってしまうことがあります。

対面なら相手の反応を見ながら自然に調整できる声のトーンや距離感も、電話ではつかみづらい面があります。「この人にはどんな話し方が合うのか」が分からず、不安や戸惑いにつながる点が、電話応対への苦手意識の正体だと感じています。

理由2:電話でのコミュニケーションや言葉遣いに自信がないから

電話でのコミュニケーションや言葉遣いに自信が持てない背景には、そもそも電話に慣れていない世代が増えていることもあります。就職して初めて固定電話に触れたという人も少なくなく、応対の基本【名乗り・相づち・復唱・受けとめ・お礼・おわび】などを学ぶ前に、いきなり実務に入ることで、不安が大きくなりやすい状況です。

そうした状況の中で、相手から厳しい言葉を受けると、「自分の言い方がまずかったのでは」と感じ、さらに自信を失ってしまいます。相手に合わせた言い換えができない経験が積み重なり、電話応対そのものが怖くなるきっかけになっていると感じます。

怖いから会話に萎縮してしまい、結果として言葉の引き出しが少ないまま対応することになってしまいます。例えば、謝罪の時など「申し訳ございません」の言葉をひたすら繰り返すだけになる場面も出てきて苦しくなります。また、敬語を「正しく使わなければいけない」という思いが強いほど、間違えることが怖くなっていきます。

電話応対が怖くなくなる心構え

電話応対が苦手と感じる理由は「相手の顔が見えないから」「電話でのコミュニケーションや言葉遣いに自信がないから」

人生に役立つコミュニケーション技術と捉える

ーー電話応対への苦手意識を乗り越えるためには、どのように考えると良いでしょうか。

電話応対への苦手意識を和らげるには、「電話の仕事」と限定して考えすぎないことが大切だと思います。電話で求められる基本的な話し方や聴き方は、特別なものではなく、人生のさまざまな場面で役立つ力だからです。

結婚や親戚づきあい、友人関係など、人と関わり続ける限り、相手を思いやりながら言葉を交わす力は欠かせません。そう考えると、電話応対での会話技術は特別なものではなく、人間関係全般に通じる技術だと捉えられます。

電話に限らず、「人と向き合う力」を磨く機会だと位置づけることで、過度な緊張や恐怖心は自然と薄れていきます。結果として、人間力を高め、人生をより豊かにする力として身についていくのではないでしょうか。

まずは「聴く」ことに集中する

ーー電話応対に慣れていない人はまず、どういう心がけで臨めばよいのでしょうか。

すぐに答えようとするより、まず聴くことに集中する意識が大切です。電話応対では、話すよりも聴く時間の方が長く、全体の6割、7割は「聴く」姿勢で向き合う方が会話がスムーズに進みます。

特に相手が感情的になっている場面はなおさらです。相手が困りごとや不安、怒り、悲しみなどを抱えて話している時、正しい答えを急ぐとかえって反感を買ってしまいます。相手が答えそのものよりも、「自分の状況や気持ちをまず理解してほしい」と強く感じているからです。

感情が高ぶっている状態では、どれだけ正確な説明をしても受け入れてもらえず、話がこじれやすくなります。まずは耳を傾ける姿勢で、相手の言葉を正確に受け取ることが大切だと言えるでしょう。

ーーまずは聴くことに集中するのが大事なんですね。コツはありますか?

相手の話を遮らず、しっかり聴くことです。内容だけでなく背景や求めていることに意識を向け、相手が話しやすいように耳を傾けます。その上で、「そうだったんですね」といった言葉に加え、要点を復唱したり相づちを打ったりして、受け止めている姿勢を示します。

さらに、「大変な時に恐れ入ります」「それは大変でしたね」といった共感の言葉を添えると、相手は自分の状況を理解してもらえたと感じやすくなります。共感の姿勢を示すうちに、感情が少しずつ落ち着いていく場面は多くあります。

その際、会話の組み立てもポイントで、聴く→受け止める→その後に自分の話をする、という順番が重要です。遠回りに思えても、よく聴いてから話すほうが結果的に会話はスムーズに進み、トラブルも起こりにくくなります。

共感の姿勢を示すフレーズ

ーー相づちの打ち方について、初対面や目上の相手に対しては、どのような点を意識すると良いでしょうか。

相づちは会話に欠かせない要素で、特に初対面や目上の方に対しては「はい」を基本にするのが安心です。一方で、「なるほど」や「参考になります」は、目上の方に使うと失礼にあたるため注意が必要です。代わりに「勉強になります」といった表現がおすすめです。

また、「はい」一言でも、声のトーンや言い方で印象は大きく変わります。かぶせ気味だと急かしているように聞こえ、間が空きすぎると聴いていない印象になりがちです。相手の話を受け止める気持ちで、自然な間を意識したいところです。

さらに、「詳しく教えていただいてありがとうございます」「お気遣いありがとうございます」と途中でお礼を挟むと、会話の雰囲気が和らぎます。相づちにひと工夫加えることで、相手との距離も縮まりやすくなります。

【例文付き】相手に伝わる言葉遣いと話し方の基本マニュアル

敬語を正しく使い分ける

ーー敬語の使い方は特に難しいですよね。上達するための練習方法を教えてください。

電話応対で迷いやすいのは、尊敬語と謙譲語の使い分けです。よくある間違いが、名前を復唱する際に「〇〇様でございますね」と言ってしまうケースです。「ございます」は自分側を下げる表現のため、正しくは「〇〇様でいらっしゃいますね」になります。伝言する際の表現も、社内や身内には「申し伝えます」、お客様には「お伝えいたします」と、立場によって言い方を変える必要があります。

丁寧にしようとするあまり、「ご覧になられる」といった二重敬語(正しくは「ご覧になる」)になってしまうことも少なくありません。敬語で大切なのは、今自分がどこに立っているのか、相手を上げる(立てる)のか自分を下げるのか、その構図を意識することだと思います。

練習としては、怖がらずに使ってみて、間違えたら「失礼いたしました」と言い直せば十分です。それ以上に、復唱や相づち、声のトーンといった基本ができているかどうかのほうが、相手の印象を左右しやすいと感じます。

電話応対で知っておきたい正しい敬語表現や応対用語例

電話応対で役立つ! “できる人”の言い換えフレーズ集

ーー実際の現場で役立つ言い換え表現には、どのようなものがありますか。

決まった一言に頼らず、状況に応じて言い換えられる表現をいくつか持っておくと良いでしょう。例えば謝罪の場面でも、「申し訳ございません」だけで終わらせるのではなく、「大変失礼いたしました」「こちらの配慮が足りませんでした」といった言葉を使い分けられると、相手に伝わる印象が変わります。また、相手の指摘や要望に対して「ごもっともでございます」と受け止める表現があると、きちんと話を聴いている姿勢が伝わりやすくなります。

もう一つ大切なのは、会話中に書き言葉と話し言葉を意識することです。「詳細をお送りします」と言うよりも、「詳しくまとめてお送りしますね」と言い換えるだけで、会話として柔らかい印象で理解しやすくなります。

こうした言い換え表現に慣れるまでは、いくつかの言い回しを手元に持っておくと良いです。「何と言えば良いか分からない」という不安が減っていきます。硬いビジネス用語だけでなく、相手に伝わりやすい話し言葉を意識して引き出しを増やしていくことも、結果として“できる人”の電話応対につながり、さらには日常の言葉も彩り豊かにしてくれるのだと思います。

電話応対で役立つ“できる人”の言い換えフレーズ集

声と話し方も大事|印象を良くする「笑声(えごえ)」

ーー話す内容以外の面で気を付けるべき点はありますか。

電話では、話している内容以上に、声のトーンや話し方が相手の印象を大きく左右します。言葉には意味があり、その意味に合った音声表現をすることが基本です。例えば「ありがとうございます」も音声表現が違うと事務的に聞こえ、感謝の気持ちが伝わらないことがあります。同じ言葉でも、どう声に乗せるかが重要だと感じます。

現場で大切にしている基本が「笑声(えごえ)」です。口角を少し上げるだけで声は明るくなり、電話の向こうにも笑顔が伝わりやすくなります。無理に明るくしようとしなくても、表情を整えて受話器を取るだけで、自然と声は変わります。

特に、電話応対での最初の名乗りは、第一印象を左右します。明るさの度合いは企業イメージに合わせる必要がありますが、目的の企業に電話がつながったことを相手に伝えて、印象良く会話をスタートさせていきます。名乗る際に、名字の一部に軽くアクセントを置くことを意識すると、聞き取りやすく、印象が変わってくるので楽しんでいろいろ試してみてください。

電話応対で印象を良くする印象を良くする「笑声(えごえ)」や声のトーン

言葉の引き出しを増やす|新聞で言葉選びや説明の組み立てを学ぶ

新聞で言葉選びや説明の組み立てを学び、言葉の引き出しを増やす

「赤ちゃん方式」まねることで言葉の選択肢を増やす

ーー日頃から言葉の引き出しを増やすことも大切ですよね。

そうですね。同じ内容でも相手や状況に応じて言い換えができるようになり、会話に余裕が生まれます。言葉の在庫が増えることで表現力が豊かになり、会話に深みが出てきます。結果として、電話応対そのものへの不安も和らいでいくでしょう。

言葉に慣れるまでは、いくつかのフレーズをメモし手元に置くのも一つの方法です。豊かな言葉を使える人は、電話の向こうでも自然と信頼されやすく、「この人は違う」と感じてもらえる場面が増えていくと思います。

ーーでは、そうした言葉の引き出しを、日常の中でどのように増やしていけば良いのでしょうか。

言葉の引き出しを増やす方法としておすすめなのが「赤ちゃん方式」です。周りの人の言葉をよく聴き、自分にない表現があれば真似してみる。失敗を恐れずに使ってみる。この積み重ねが大切だと思います。「学ぶ」ことは「まねる」ことから始まると言われています。

多くの人は、無意識のうちに得意な言葉や口癖を繰り返し使っています。「この言葉、よく使っているな」と気づいたら、別の表現に置き換えてみると、会話の雰囲気が和らいだり、相手の反応が変わったりすることもあります。気軽に試してみる意識が大事です。

雑誌の対談記事やラジオも、自分の中にない言葉や表現に触れられる良い機会です。私も気になった言葉は、すぐにメモを取り、実際に使ってみます。すぐに変わるものではありませんが、少しずつ工夫することで、自分の言葉として定着していきます。

言葉の引き出しを増やす方法としておすすめなのが「赤ちゃん方式」

新聞は「伝えるための言葉」を鍛えるのに適した教材

ーー言葉の引き出しを増やすという観点では、新聞も役立ちそうです。三澤さんは新聞を読まれていますか。

毎日欠かさず読んでいます。新聞の良さは、「書き言葉」と「話し言葉」の違いを意識できる点にあります。日本は書き言葉の文化が発達してきましたが、電話では文字が見えない分、いかに話し言葉に置き換えるかという力が求められます。新聞は書き言葉のかたまりなので、それをどう話すかを考える材料として、とても相性が良いと感じます。

私自身は、新聞をニュースキャスターになったつもりで声に出して読むことがあります。そのまま読むと不自然に感じる部分が必ず出てくるので、言い換えたり、補足を入れたりする。そうした違和感に気づくこと自体が、「伝えるための言葉」を考える良い練習になります。

もう一つの良さは、伝えたい内容が凝縮された見出しです。最初に要点をまとめて伝える工夫は、電話応対でも参考になるでしょう。新聞の大見出しのように、相手が思わず耳を傾けたくなる言葉を選ぶ。その積み重ねが、電話での言葉選びや説明の組み立て方に、確実に生きてくると思います。

電話応対に役立つ新聞の読み方は「話し言葉に置き換えながら読む」「見出しの表現を参考にする」

ーー新聞を読むことが、実際の業務に生きる場面はありますか。

例として、電話契約をしているお客様が相手のケースを考えてみましょう。迷惑電話対策やナンバーディスプレイ機能をご案内する場面では、新聞で取り上げられている話題を会話に盛り込みます。「新聞でもよく目にすると思いますが、特殊詐欺や闇バイトに関する電話が増えている時代です」と切り出すだけで、説明に納得感が生まれやすくなります。

時事として多くの人が知っている内容なので、こちらの話を否定されにくく、自然と耳を傾けてもらえる感覚があります。幅広いジャンルの情報が掲載されている新聞は、実際の会話の中でも使いやすいと感じます。

こうした切り口は、会話の台本を作る時にもよく活用しています。時事ネタをベースに組み立てることで、現場で使いやすい説明になります。

新聞の時事ネタを使用した会話の例

ーー忙しい中でも無理なく続けられる、新聞の読み方や活用の工夫があれば教えてください。

継続のコツは「毎日きちんと読まなければならない」という考えを手放すことです。新聞が届いたら、まずはリビングのテーブルの上に置く。目につく場所にあると、自然と手に取りますし、「今すぐ読まなくては」と気負わないだけで、気持ちがぐっと楽になります。

時間がない時は、本文まで読まずに見出しだけを追えば十分です。「これは後で読もう」「仕事に使えそうだな」と感じた記事だけを拾い上げます。細かく読めない日は、無理に読み込まなくても問題ありません。

気になった記事は切り取って保管しておき、時間がある時に読み返します。完璧に整理する必要はなく、ファイルに入れておくだけでも意味があります。その場で読めなくても、情報をストックしておく意識が、無理なく新聞を活用するポイントだと思います。

忙しくても新聞を読むには「見出しだけをチェック」「記事を保管して後で読み直す」

言葉を知ることが電話応対の自信につながる

電話応対が苦手に感じられる背景には「どう言えば良いのか分からない」という言葉への不安があります。言葉の引き出しが増えるほど、声のトーンや話し方にも余裕が生まれ、受け答えは自然になっていきます。相づちや言い換え表現は、知っていれば誰でも身につけられる技術です。

その土台づくりとして役立つのが新聞です。新聞には、会話に盛り込みやすい社会的なニュースが詰まっています。記事の概要を端的に伝える「見出し」は、分かりやすく伝える工夫が求められる電話応対の参考になるでしょう。まずは新聞の気になるページから気軽に触れてみてください。

言葉を知ることは、電話応対を楽にするだけでなく、仕事や人間関係全体を支えてくれます。少しずつ言葉の引き出しを増やし、相手とのやりとりの中で適切な表現を身につけていくことが、社会人としての自信につながっていくはずです。

ケーブルテレビ株式会社 カスタマーサービス本部 コンタクトセンター課長三澤教子(みさわ・のりこ)さんケーブルテレビ株式会社 カスタマーサービス本部 コンタクトセンター課長
三澤教子(みさわ・のりこ)さん