子育てに役立つアドラー心理学を熊野氏がわかりやすく解説

「早く片付けて」「明日の準備した?」――いつも同じことを子どもに言っていて疲れた、子どもの言動につい感情的に反応してしまうなど、尽きない子育ての悩み。そんな悩みを解消してくれる一助になるのが「アドラー心理学」です。

「子どもの自立の前に、親の自立が必要です」と語るのは、株式会社子育て支援代表の熊野英一さん。ベビーシッター事業や子育てに関する講演に取り組む熊野さんの著書「育自の教科書 〜父母が学べば、子どもは伸びる〜」(アルテ、2016年)では、アドラー心理学に基づく「アドラー式子育て」の方法と有用性を紹介しています。

今回は熊野さんに、アドラー式子育てが子どもの自立を促す理由や親が気をつけるべきことについて聞きました。また、子どもの自立には「新聞」もカギになるとのこと。その理由も伺います。

 

株式会社子育て支援代表の熊野英一さん

 

 

アドラー心理学に基づく「アドラー式子育て」とは?

 

どうしたら、人は幸せになれるのか?アドラー心理学の幸せの 3 条件

 

―― 最初に、アドラー心理学について教えてください。

 

アドラー心理学は、フロイト、ユングに並ぶ心理学の 3 大巨頭とされるオーストリアの精神科医アルフレッド・アドラーの「どうしたら、人は幸せになれるのか?」という問いからなる心理学です。現代を生きる私たちに、極めてシンプルに「こたえ」を提供してくれる一筋の光として、注目を集めています。

アドラーは第一次世界大戦に軍医として参戦し、戦場で心を病んだ兵士を治療していました。その際に編み出したのが、アドラー心理学のカギである「共同体感覚」の思想です。

アドラーは「人は共同体感覚を感じられる時に幸せを感じる」と定義し、アドラー心理学では人の幸せを 3 つの条件によって定義しています。

 

【アドラー心理学 幸せの 3 条件(=共同体感覚の条件)】
1. ありのままの自分を認めることができる人が(自己受容)
2. 周囲の他者を信頼しながら(他者信頼)
3. 自己を犠牲にすることなく、他者に貢献する(他者貢献)

(出典:「育自の教科書 〜父母が学べば、子どもは伸びる〜」)

 

アドラーは人間の本性から、人が争い合うことを非建設的な選択だと捉え、「協調的にお互いを受け入れることはできないのか?」「私とあなたはどうやったら仲良くできるか?」を考える過程で「共同体感覚」にたどり着きました。

第一次世界大戦のさなか、人と人が殺しあう現実を目の当たりにしたにもかかわらず、人と人は仲間であり、他者への信頼や貢献による「共同体感覚」を幸せだと捉えて「汝(なんじ)の敵を愛せ」と説いたことから、当時アドラーの思想はなかなか受け入れられなかったと言います。

 

「自立と幸せのカギは、社会と調和する「共同体感覚」を養うこと」と語る熊野さん

 

自立と幸せのカギは、社会と調和する「共同体感覚」を養うこと

 

―― アドラー式子育てとは、どのような子育て方法でしょうか?

 

アドラー心理学に基づく子育て手法です。

一人一人が自分らしくいられること、お互いに協力し合える関係を周囲の人たちと築けている状態が 「共同体感覚」を高めます。そして最終的に「自立」させることを目標に、先ほど述べた「自己受容」「他者信頼」「他者貢献」の 3 つの条件を満たしていきます。

自立とは、次のようなことを指します。

 

【自立とは】
1. 保護者(通常は親)の保護から精神的に独立して
2. 自分のことを信頼しながら
3. 社会(他者)との適切で建設的な関係を構築して生きていくこと

(出典:「育自の教科書 〜父母が学べば、子どもは伸びる〜」)

ここで強調したいのは、自立とは一人きりで立つことではないということです。なぜなら人間には限界があり、自分の不完全さを認めて仲間に頼ることも必要だからです。だからこそ、一人立ちした上で社会と調和して暮らすことを目指す「共同体感覚」は重要であり、この共同体感覚を養うことが幸せのカギになります。

 

「自己受容」「他 者信頼」「他者貢献」の 3 つの条件を満たすと共同体感覚が高められ自立につながる

 

アドラー式子育てでは、幸せの 3 条件を満たしているか毎日互いにチェックし、家族全員が達成できている状態を目指します。

ここで重要なのは、家族とは誰かが誰かを支配する上下の関係ではなく、リスペクトし合う仲間であると捉えることです。子どもに接する際、親が上というタテの関係を意識するご家庭が多いと思いますが、アドラー式子育てでは親と子どもの関係がタテではなくヨコであり、親が子を支配しない対等な関係性を築くことが求められます。

 

 

アドラー式子育ての第一歩は「親の自立」

 

「朝、起きられなくて大丈夫?」親から寄せられる子育ての悩み

 

―― 熊野さんが取り組まれているベビーシッター事業や保育所では、どのような子育ての相談がくるのでしょうか?

 

「朝、起きられなくて大丈夫なのか?」「良い会社に就職できるのか?」「良い大学に行けるのか?」など、子どもの将来の心配や生活面の不安からくる悩みが多く寄せられます。特に小学生の子どもを持つ親は「友達ができるだろうか?」「ゲームばかりしていて勉強しないけど、このままでいいの?」など、 基本的な生活習慣への悩みを持っている方が多いですね。

中学生の親からは、進路への不安の声を聞くことがほとんどです。特に「自分の言うことを聞き入れてくれない」と子どもの反発や反抗期に関する悩みを聞くことが多いです。でも、それはごく当たり前のこと。

思春期を迎えた子どもは、豊かな感受性を持って自分のアイデンティティーに悩むようになります。友達と比較したり、第二次性徴期を迎え変わる体に戸惑ったり、さまざまな心身の変化に向き合うわけです。

そんな時に親が主観や経験に基づいて「こうすればうまくいく」「この進路に進みなさい」と伝えることは、子どもにとって大きなストレスやプレッシャーになります。親と子どもは過ごしている時代も価値観も違います。自分でも悩んでいるところに答えを指図されたら、それは反抗してしまいますよね。

 

「親の課題」と「子どもの課題」を分離する

 

―― 子育ての悩みに、熊野さんはどう答えているのでしょうか。

 

まず「自分の課題と子どもの課題を混ぜていませんか?」と聞いています。

例えば「朝、子どもがなかなか起きてくれません。自立できるのか不安です」という親の悩み。一見子どもの自立を思うやさしい親の悩みのように見えますが、これは本来、子ども自身が向き合うべき課題です。

「子どもが保育園に行かないと仕事に行けないから起きてほしい」「子どもが学校に行かないと世間体が悪い」など自分の事情が含まれていないか、今一度自分自身に問い掛けてみてください。

それに「起こしてあげなければならない」「起きてほしい」と親の都合で子どもを起こし続けることは、アドラー心理学における自立の条件の一つである「保護者(通常は親)の保護から精神的に独立する」 ことからほど遠く、子育てが目指すべき本当の意味での「自立」や「幸せ」の足を引っ張ることになりま す。

子どもの自信とやる気を無くさせるような言動やアクションを私たちは「勇気くじき」と呼んでいます。親が子どもを心配するのは当たり前ですが、その心配をそのまま押しつけると、望まない方向に子どもの成長を促してしまう可能性が高まるわけです。

 

子どもを無条件に信頼するには「親の自立」が必要

 

―― 親が子どもの自立を促すために取った方がよいアクションを教えてください。

 

先ほどの例で言えば、親に起こされ続けた子どもはいつしか「自分で起きなくてはならない」という自立意識をなくし、最終的には「なんで起こしてくれなかったの」と親の助けに依存するようになります。 アドラー心理学における「自立」にふさわしい環境で育った場合、子どもは 4、5 歳でも目覚まし時計で起きられると言われているんです。

これは、子どもの成長におけるどのような悩みにも共通して言えることです。親からの過剰な愛情を与えられた子どもは、いつの日か「親の愛情や期待に応えなければ」とプレッシャーを感じ始めたり、そこから逃れるために反抗・非行に走ったり、あるいは摂食障害や鬱(うつ)といった身体的症状に発展したりすることがあります。

アドラー式子育てでは、このような状況を防止するためには子どもを「無条件に信頼」する必要があり、そのために親が自分自身を信頼する必要があるとされています。私たちは自分自身を信頼することができないまま他者を無条件で信頼することはできないからです。

先ほど伝えた自立の条件の 1 つ、「自分のことを信頼する」という項目につながります。

 

まずは自分を育て る意識で子育てをするというアドラー式子育てについて語る熊野さん

 

 

完璧ではない自分を認め、子どもと一緒に成長しよう

 

―― 自分のことを信頼するとは、どのようなことでしょうか?

 

「完璧ではない自分を認める勇気を持つ」ことです。育児をしていると、親はつい「自分は完璧な存在でないといけない」と思いがちです。しかし、親も人間です。うまくいかないことや失敗があって当然です。

子どもに感情的に怒ってしまった、余裕がないゆえに理不尽なことを言ってしまったと反省する親もいるのですが、期待をかけすぎたり心配しすぎたりするのは仕方のないことです。

だからこそ親は、「自分は完璧ではなく、子どもと共に育つ過程にある存在だ」という意識を持つ必要があります。私の著書「育自の教科書」の「育自」が自分の「自」になっているのは、まずは自分を育てる意識で子育てをするというアドラー式子育ての考えの表れです。

そして親に求められるのは、未熟な部分に気づいた時にそこで立ち止まるのではなく、少しずつ成長する背中を子どもに見せることです。完璧ではない自分を認め、困難に立ち向かうことは苦行ではあり ません。成長することは楽しいと自ら体現することで、子どもは「こうやって自分も成長すればよいのか」と学習します。

アドラー心理学に基づく子育てでは、家族を 1 つのチーム、つまり「共同体」として捉え、みんなで成長していくという考えで子どもと向き合います。食事中など家族団らんの時間に「今日は幸せの 3 条件を達成できたか?」をさりげなく全員で確認し、成長の過程を共有することで、自立や幸せのカギである 「共同体感覚」を身につけられるわけです。

 

 

「ほめずに勇気づける」アドラー式子育て、具体的な手法とは?

 

勇気=「困難を克服する力」 勇気づけで自ら考える力を育む

 

―― 例えば、子どもが一人で起きられるようになったなど、子どもの成長を感じた時はやはりほめてあげることが大事でしょうか。

 

アドラー心理学において「ほめる・叱る」とは、上の人が下の人を格付けして操作しようとする「評価」の行為だと捉えています。その代わりに「勇気づける」ことに重きを置いています。

あくまでも家族はタテの関係ではなく、リスペクトし合うヨコの関係のチームです。親が子どもを評価するのは、アドラー式子育ての思想に反しているのです。ほめたり叱ったりすることによって子どもは一時的に従順になるかもしれませんが、そのうちに「ほめてもらうために、叱られないためにどうすればよいか」と相手の顔色を伺うようになります。

一方、「勇気づけ」は子どもに「困難を克服する力」を与えます。困難を克服するために自分で考える力を育て、誰かの指示がなくても自分自身の力で建設的な方向に進み、自立するように導くのです。

 

アドラー式子育てでは親と子どもの関係がタテではなくヨコであり、親が子を支配しない対等な関係性を築くことが求められる

 

子どもの”関心”に関心を寄せる。「同意」ではなく「共感」が大事

 

―― 親は子どもをどのように勇気づければよいのでしょうか?具体的な手法を教えてください。

 

勇気づけの基本は、よく聴くことです。子どもの気持ちに寄り添うことにエネルギーを注ぎ、共感する態度で接してあげてください。自分の思っていることや価値観を話すのではなく、相手の話に耳を傾けることが大切です。

ここでよくある勘違いが「共感=同意」だという認識ですが、必ずしも正しくありません。アドラー心理学において共感とは相手の発言の裏側にあるものや本心を引き出し、それを理解しようとすることです。 つまり「相手の関心に関心を寄せること」です。

例えば、子どもが「ゲームを一日中していたい」と言ったとします。これに対して「そうだね」「自分もそう思う」と無理に同意しようとすることは決して共感ではありません。「どうして一日中ゲームがしたいのか」「もしかしたらゲームを最優先にしなければならない理由があるのかもしれない」と発言の背景をたどり、それに対してコメントすることが、ここでお伝えしたい「共感」の真理です。

ちなみに、共感力を高めることは商談や仕事での対人関係など、子育て以外にも大いに役立ちます。相手の求めることや言いたいことに耳を傾けて理解する力を身につけることで、相手の気持ちに寄り添った提案や建設的なコミュニケーションを取ることができるようになるからです。

 

―― 具体的な言葉の掛け方などのコツはありますか?

 

よく「子どもを勇気づける魔法のキーワードはありませんか?」「何をすれば子どもを勇気づけられるのでしょうか?」と聞かれますが、実は魔法のキーワードやテクニックはありません。というよりも「魔法のキーワード」を丸覚えすることは危険です。

フレーズとして勇気づけのテクニックを丸暗記して利用すると、相手を操作しようとする意思が働くからです。例えば相手への感謝を表明する「ありがとう!」や相手の成長を認める「頼りにしているよ!」な どの声掛けはとても良いと思います。

しかし、その言葉の裏に「こう声を掛けることでさらに頑張ってくれるはず」「もっと家事を手伝ってほしい」といった期待や相手を操作しようとする意思が込められているならば、勇気づけの意味をなしません。

重要なのは、相手を心から勇気づけたいと思うこと。子どもの言動や行動に感情的に言葉をぶつけるのではなく、一呼吸を置いてその背景にあるものを読み取る練習をしましょう。

 

子どもを勇気づける声掛けには期待や相手を操作しようとする意思を込めない

 

しん「ぱ」いではなく、しん「ら」いしよう。決断は子どもに委ねる

 

―― では、子どもの成長過程で親は何も声を掛けてはいけないのでしょうか?

 

もちろん、そんなことはありません。「何かしてあげなくては」とあれこれ口出しするのは過保護ですが、子どもの成長を見守る上で何もアドバイスができないのは親として寂しいものですよね。そんな時に意識してほしいのは、子どもを「心配」するのではなく「信頼」しているかどうかです。「しん”ぱ”いではなく、しん“ら”い」。私はよく「“ぱ”を“ら”にしてください」と伝えています。

 

子どもを「心配」するのではなく「信頼」してほしいと語る熊野さん

 

具体的には、子どもがある程度会話できる年齢になったら、何を手伝ってほしいか聞くことをおすすめします。子どもを信頼した上で、年齢や経験に応じてできることとできないことを話し合ってみましょう。

できることとできないことを整理した上で選択肢を提示することも、信頼の上で親ができる寄り添い方です。「こんなお手伝いならできるよ」とサポート案を準備したり、「この選択をしてくれたらうれしい」とリクエストしたりするのも良いでしょう。

重要なのは、最後の決断は子どもに委ねること。「それで子どもは不安にならないのか?」と心配に思う方もいるかもしれませんが、話し合いや日々のコミュニケーションの中で自分が常に味方でいると伝えていれば、それだけで子どもは勇気が出るものです。

あくまでも子どもと自分はヨコの関係であることを意識して、まずは子どもの関心に関心を向ける。そして最終的には、子どもが自分自身で選択できる環境を作る。これがアドラー式子育ての基本です。

このような環境で育った子どもは自分の選択に責任感を感じるようになり、その選択の先で何かをやり切ったときに達成感を強く感じるようになります。自分で自分のことを好きになりますし「やる気や自信を持ち、もっと社会に出ていきたい!」と自立するわけです。

 

 

相手への「共感力」を高めるちょっと意外な新聞の活用法

 

新聞の「自分の関心を超えた情報」は共感の宝庫

 

―― 子どもを勇気づけるコミュニケーションの前提は、子どもに対する「共感」だという話がありました。親が「共感力」を鍛える方法はあるのでしょうか?

 

漫画やドラマ、映画などの物語や作品を見たり、ニュースを通じて情報に触れたりすることは、登場人物や作者がどんな気持ちなのか想像する「共感」の練習になります。特に、新聞は共感の宝庫だと思います。

新聞にはさまざまな「物語」が散りばめられており、特集の登場人物や記者の意図、ニュースの背景にある課題など、自分の関心を超えた新しい情報が得られます。

インターネット上のまとめサイト、ブログ、SNS なども情報収集の手段となっていますが、これらは自分の関心事に基づく情報がパーソナライズ化されるという側面があります。興味を深めるという意味では有効なツールですが、「共感」の側面から見ると「同意」の練習に偏りがちになるかもしれません。

政治や経済の問題、スポーツまでさまざまなトピックスの背景や当事者の生い立ちを想像できるだけでなく、レイアウトや広告からも社会の情勢をひも解くことができるのは、新聞ならではのメリットです。

例えば広告は、想定読者の関心が高いものや、読者の困り事を解消するものがよく掲載されていま す。「なぜ、この広告が新聞に掲載されているのか」「読者は日頃こんな事に興味関心を抱いているのかもしれない」と掲載されている理由について想像を膨らませることで、物事の背景を読み取る練習ができます。

また、複数の新聞を読み比べるのもおすすめです。同じニュースでも媒体ごとに取り上げ方が異なることが多いため、その違いを読み解くことが大切です。私は父が公務員だったこともあり、自宅には複数の新聞が置いてありました。幼少期から複数の新聞を読んでいた経験は、今の自分の世の中の見方に大きな影響を与えていると実感しています。

 

新聞は共感の宝庫だと語る熊野さん

 

親が新聞を読んでいる家庭は、子どもが自立しやすい

 

―― 子どもの自立にも新聞の購読は役立つと思いますか?

 

はい、子どもの自立に役立つ側面はあると思います。

まず、新聞を習慣的に読んでいる親は、活字や情報に触れ多くの学びを得たいと日頃から考えている傾向にあります。つまり、自分を客観視できる人、自分の完璧でない部分を正しく認めることができる人と言えると思うんですよね。親自身が自分の不完全さを認めることは、子どもの自立を促す上でとても重要となります。

情報に積極的に触れる生き方を親が見せることによって、子どもは自然に親以外から提供される情報の重要性を認識するようになります。例えば、新聞に掲載されたニュースや出来事を話題にして、親が子どもと話し合う光景を思い浮かべてみてください。その日常を幼い頃から目にしている子どもは、 自分から意見を言ったり生の情報を得たりしようする意識が次第に芽生えるようになると思います。

このように、日頃からどのような経路から社会の情報を取り入れるか、そして親が子どもと一緒にその情報にどう触れていくかということは、アドラー式子育てを実践する上でとても重要だと言えます。

 

記事について話し合うことが、建設的な対話の練習に

 

―― 親子でニュースについて語り合うことは、他にどんな効果がありますか?

 

子どもと一緒に新聞を読みながら、ある記事のテーマについて、それぞれどう思ったかを話し合ってみると良いでしょう。討論や意見のぶつけ合いではなく、価値観の違いを知る「対話」は、建設的な話し合いやお互いを尊重するコミュニケーションの練習になります。

意見が分かれている問題や、当事者同士の対立関係が取り上げられている記事の場合は、あえて子どもとは逆の立場に立って話し合うと良いかもしれません。子どもの純粋な視点はむしろ大人の意見より的を射ている時もあり、親にとって新たな気づきとなることもあります。

例えば、A 国と B 国の間で起きた戦争についての記事を読んだ時、子どもが「A 国の主張が正しいと思う」と言ったら、親は「じゃあ私は B 国の立場で考えてみるね」と反対の立場に立ってみるとします。 その際、親は子どもと異なる視点に立ちながらも、子どもの考えにじっくりと耳を傾けてみましょう。決して否定することなく子どもの考えを尊重し、次に親自身の見方も話します。そうして、お互いの考えから推察できたことを整理していきます。

こうした建設的な対話を繰り返すことによって、戦争の背景を考えるようになるはずです。

 

新聞の活用方法は「記事やニュースの登場人物に関心を寄せる」「新聞を読み比べる」「子どもと記事内容について意見交換をする」「広告を見て掲載意図を考える」

 

 

アドラー心理学は、親と子どもの自立に役立つ子育ての土台となる

 

今回はアドラー式子育てを提唱する熊野さんに、親子それぞれの「自立」に必要なコミュニケーションや、子育ての在り方について聞きました。

アドラー式子育てのカギは「親の自立」だと語る熊野さん。

心配する気持ちゆえに、どうしても親は子どもをほめたり叱ったりすることで自分の理想に誘導してしまうもの。子どもに対してつい感情的になってしまい、反省を繰り返すこともあると思いますが、自分の未熟な点に気づけることは親として成長する第一歩のようです。

まずは、完璧ではない自分自身を認めることが“育自”の始まりです。

熊野さんはまた、子育てをタテの関係ではなくヨコでつながる共同体だと捉え、子どもの話に共感し、勇気づけることが必要だと教えてくれました。子どもに寄り添い心配を信頼に変えていくことが子どもの自立につながります。

 

アドラー式子育てのカギは「親の自立」だと語る熊野さん

熊野英一(くまの・えいいち)さん
株式会社子育て支援代表取締役/日本個人心理学会理事/日本アドラー心理学会正会員

フランス、パリ生まれ。早稲田大学政治経済学部経済学科卒。メルセデス・ベンツ日本で人事部門に勤務後、米インディアナ大学ケリースクール・オブ・ビジネスで MBA/経営学士を取得。米製薬大手イーライリリーを経て、保育サービスの株式会社コティに入社。 約 60 の保育施設の運営や、ベビーシッター事業に従事。2007 年株式会社子育て支援を創業、代表取締役に就任。21 年一般社団法人ビリーバーズを設立、代表理事として不登校支援に取り組む。

 

2023年5月30日公開
※インタビュー中のトピックは取材時のものです