【就活を考え始めたあなたへ】内定獲得に近づく新聞の読み方

 

 「就活の時は、社会で何が起きているのかを特に知っておいた方がよい」「正しい情報を集める方法として新聞を活用したい」――。

 これは、就活前の大学生に新聞を読み続けたいかどうか尋ねた際のリアルボイス。情報収集をテーマにした大学生向けイベントの参加者から届いた感想の一部です。

 一方、「知識や語彙(ごい)が増えるなど、良い点があるのはわかっているけど、読み続ける自信がない」「新聞を読む習慣を生活に取り入れられるかわからない」といった声もありました。

 そこで、朝日新聞社の諸麦美紀さんに就活生に役立つ新聞の読み方を聞きました。具体的ですぐ実践できるアドバイスをたくさん教えてもらいました。

 

 

まずは、新聞のどこを読むべき?

「最も社会に影響のあるニュース」を1面~3面でチェック

 ―― 新聞には企業のニュースも多く載っていますが、就活生は特にどのページに目を通しておくのがよいでしょうか。

 まず新聞の1面(「○○新聞」という題字のある1ページ目)から3面までは、見出しだけでも見た方がよいと思います。「その日、日本・世界で起きたこと」のうち、最も社会に影響のあることが、この1面から3面にかけて載っています。もちろん、新聞社によってこの価値判断は変わります。それぞれの新聞を図書館などで読んでみるのも勉強になるかもしれません。

 新聞はネットと違って手元に残るので、朝でも夜でも読めます。ぜひまずは新聞を広げてみてほしいなと思います。

 1日10分でも時間を作れば、そこに世界が広がっています。新聞にはフェイクニュースが載っていませんので、安心して読んでもらえると思います。ただ、記事の内容をうのみにせず、やはり自分で考えながら読むことが大事です。

 

「半径5メートルにしか興味がない人」を採用したい企業はない

 ―― 興味のない記事も読み続けた方がよいでしょうか。読み続ければ、興味のあることが見えてくるのでしょうか。

 厳しい言い方ですが、「自分の半径5メートル以内のことにしか興味のない人」はどの会社も採用したいと思いません。自分の興味を広げることは、就活でも社会人になっても必要です。

 新聞でもテレビでも雑誌でも、「自分の興味を広げよう」と思って接すれば、そのきっかけを得られると思います。

 

 

 

新聞の特徴① 情報のバランスの良さ|読み続けると自分の引き出しが増える

―― 「就活の時は新聞を読んだ方がいい!」とよく聞きますが、どうしてでしょうか。インターネットやSNSだけではダメでしょうか。

 ネットやSNSで目にする情報は、全てアルゴリズム(計算方式)でコントロールされています。チョコレート好きの人にはチョコの情報ばかり、アイスクリーム好きの人にはアイスばっかり表示されるように設定されています。これだと視野は広がりません。

 それに対し新聞は、バランス良くいろんな情報が載っていて、言わば「幕の内弁当」のような商品です。バランスの整った新聞を3か月でもいいのでめくってみてください。いろんな情報が自然と目に入り、知らず知らずに自分の引き出しが増えていきますよ。

 無料のネットニュースを見ないで!と言っているわけではありません。ネットの特性や仕組みを理解した上で、触れてほしいと思います。情報がたくさんあることはとても幸せです。しかし情報が山ほどあり、そこにフェイクも混じっているとなると、情報の良しあしを見抜く感度を磨く必要があります。

 

新聞の特徴② 情報の確からしさ|真偽を複数のルートで確認

 ―― 新聞記者はどのように情報の真偽を確かめているのですか。

 記者はとにかく現場に行って取材します。さらに、複数のルートで情報の真偽を確認し、確認が不十分な場合は記事を載せないと判断することもあります。

 やはり現場に行くと感情が動くんですよね。これおかしいなと感じたり、取材相手と一緒に喜んだり悲しんだり・・・。状況次第では、原稿を書きながら泣いている記者もいます。

 でも感情に動かされるだけではプロではないので、デスクと呼ばれる人が記者の書いた原稿を客観的に見てアドバイスしたり、別の人が見出しを付けたり校閲したりします。一つの記事にたくさんの人の手が加わるので、「情報の確からしさ」は高まっていくのかなと思います。

 そして、記者が苦労して書いた記事、物事の背景や「知って得する」情報は、紙の新聞か有料のデジタル版でないと読めません。

 

 

 

初心者におすすめの読み方|続けるコツは?

喜怒哀楽が詰まった社会面から読む

 ―― 新聞って難しそうなので、読み続けられる自信がありません。

 新聞は慣れるまでは後ろから読むといいですね。最終ページはテレビ欄の新聞が多いですが、1枚めくると「社会面」というページがあります。アンハッピーなニュースがやや多いですが、その時の事件や人々の喜怒哀楽が詰まっているのが特徴です。

 「泣けるニュース」も載っています。皆さん、難しい新書とか解説本よりも小説の方が得意なのではないでしょうか。それに近い感覚で読めると思います。

 新聞を何日も何か月も読み続けると、同じ企業のさまざまな動きが見えてくると思います。新商品を開発したとか、どこかの会社と提携したとか、海外に新たな工場を作ったとか。

 企業も人間と同じように、良いところもあれば悪いところもあります。新聞を一定期間読み続けることで、その企業が社会の中でどういう生き方をしているか、というのが見えてきますよ。

 

子ども向け新聞で「わかりやすく説明する力」を身につける

 ―― 学生でも、子ども向けの新聞から始めても大丈夫でしょうか。

 もちろん大丈夫です!

 子ども向けの新聞はわかりやすい言葉でニュースを解説するコーナーもあり、就活や社会人になった時に必要な知識を仕入れるのに役立ちます。「わかりやすい言葉で説明する」というスキルが身につくと、就活の面接で生かせます。社会人になってからの「説明力」「レポート力」にもつながるのでおすすめです。

 できれば半年は読み続けてくださいね。

 

 

新聞のデジタル版を有効活用する|気になる記事はスクラップ機能で保有

 ―― 新聞は紙で読まないとダメでしょうか。諸麦さんは、デジタル版と紙の新聞をどのように使い分けていますか。

 私も、朝は時間がなくて読めません!朝はデジタル版を読んでいます。

 通勤時にスマートフォンで、新聞がそのままのレイアウトで読める「紙面ビューアー」で1面から最終面までざっくり目を通します。気になった記事はスクラップ機能を使ってどんどん保存します。

 

 

 次にデジタル版の上位に表示されている30本くらいの記事にざっくり目を通します。

 時間に余裕がある時はヤフーニュースやLINEニュースといった他社のニュースサイトに飛ぶこともありますが、たいていは音楽を聞きながら「今日も頑張ろう」と思って出社します(笑)。

 デジタル版で読むメリットはまだあります。何かに興味を持った際、「それってなんで?」とか「何か良い解決策はないのかな?」とか、より深いことを知りたい時は新聞社の有料サイトを見るのがおすすめです。そこにはしっかりと構成された記事が、価値の高いものから順に並んでいます。1つの記事を読んだら関連記事も読めます。さらに、過去の記事を検索できるデータベースまで付いています。

 

新聞で磨いた「情報収集力」は就活のアピールポイントに

 ―― 就活を考える学生にエールを!

 紙でもデジタルでも、新聞にはたくさんの業種、たくさんの人の話があふれています。気になった1本の記事から調べてみると、その人が働いている企業や業界に興味が持て、就活のための情報収集にもなりますよね。

 面接の時に「何で君はうちの会社に興味を持ったの?」って聞かれた時に、「あのニュースがあって、それから調べていたら御社にたどり着きました」と話すと、情報収集能力があると思ってもらえますよ。早いうちから情報収集の土台作りに新聞を生かしてくださいね。

 

2023年3月30日公開
2024年6月 3日更新