【加藤シゲアキさんに聞く】人の心の動き 新聞を参考に


新聞を抱えて出勤する父親の姿の記憶

 

 新聞はずっと、身近なものとしてあった。幼い頃なら、早朝の自宅ポストにコトリと落ちる音と、それを抱えて出勤する父親の姿を覚えているし、20代後半から4年ほどテレビの情報番組に出ていた時期なら、時々の出来事について責任あるコメントをするため、局が用意してくれた紙面にしっかりと目を通したものだった。


 最近はネットで記事を読むことが多い。そこで気付いたのが、各紙を読み比べることの面白さ。特に東京五輪を巡る記事では論調の違いがより鮮明になり、確かにそうだなと感銘を受けたり、こんな考えもあるのかと驚かされたり。記事を受けてSNSに書き込まれたさまざまな意見にも触れれば、今の日本社会のありようまでも見えてきた。

 

小説の良さは、他人への思いの想像力が育まれること

 


 昨年は6作目となる小説「オルタネート」を刊行し、直木賞と本屋大賞の候補になり、さらに吉川英治文学新人賞を受けることができた。小説の良さは、映画や舞台が、誰かの物語をのぞき見ているような感じになるのに対して、自分が能動的にその世界に参加していく感覚になるところにあると思う。楽しく読むうちに、いつしか他人の思いへの想像力も育まれていく。

 

常日頃から、人の心の動きには敏感でいたい

 


 小説を書く際は、読む時以上にいろいろな人の人生を想像する。だから常日頃から、人の心の動きには敏感でいたい。そんな時にも新聞は役立つ。直接、小説のモデルにすることはなくとも、過去の事件の関係者インタビューなどを読んで参考にすることはある。


 新聞社が舞台の小説を書かないかって? 事件を追う人物は物語の主人公となり得るし、ちょっと興味はあるなあ。

 

アイドル・作家 加藤シゲアキ(かとう・しげあき)さん

1987年生まれ。大阪府出身。2003年、アイドルグループ「NEWS」を結成。12年に著書「ピンクとグレー」を刊行。20年刊行の「オルタネート」は吉川英治文学新人賞を受賞した。

 

2021年10月22日公開