【関口修司さん】新聞を読む子どもの学力が高いのは、なぜ?

日本新聞協会NIEコーディネーター 関口修司先生


 新聞を読む中学生は72.5%、読まない中学生は63.3%。
 何の数字かというと、2017年の全国学力テスト・数学Aの正答率です。国語Aではそれぞれ82.4%、76.6%でした。どちらも新聞を読んでいる生徒の方が、正答率が高いという調査結果が出ました。

 中学生だけでなく、小学生でも同様の結果が出ています。なぜこんな差が生まれるのでしょうか。

 日本新聞協会NIEコーディネーターで、元小学校校長の関口修司先生に話を聞きました。


関口先生:6.1。この数字、何だか分かりますか? ヒントは女子高生。

--えっ。いや、すみません。何にも思いつきません。

関口先生:女子高生が1日にスマートフォンを使う時間です(2017年3月デジタルアーツ株式会社調べ)。1日平均6.1時間、スマホを見ているということです。

--へええ。6.1時間ですか・・・。学校にいる時間と同じくらいですね。

関口先生:仮に6時間とすると、1年間で2190時間になります。では1015は?

--これも時間ですか?

関口先生:そうです。小中学校の年間授業時間です。

--スマホの半分以下ですね!! スマホ、2000時間超えですもんね!! ゆとり教育が終わって、教科書は分厚くなるし授業時間も増えたのに、スマホの使用時間の方が圧倒的に長いんですね。

関口先生:こういう状況の中で、子供たちに求められているのは、従来の読解力だけではありません。国語はこれまで、物語文の読解を重視してきました。最近は説明文を正確に読み解くことも重視されています。結果、子供たちは2種類の読解力を身につける必要が出てきました。

--読解力に種類があるんですか。

関口先生:小説や物語は、連続型テキストと呼ばれます。連続型テキストを読むための読解力は、本を読むことで身に着きます。読書は同時に感性を豊かにしてくれる素晴らしい学習です。
 一方、説明文を読むときに必要になるのが、非連続型テキストを読むための読解力です。文章だけでなく、写真や図、表、グラフなどを総合して読み解く必要があることから、総合読解力と呼ばれています。一字一句見逃せない物語文と違い、ざっくりでよいので全体を理解する必要があります。文章、写真、図、グラフなど、さまざまな要素が混ざった教材として最適なのが新聞です。

--確かに。新聞には文章だけじゃなくて写真とかもいっぱい載ってますね。

関口先生:連続型テキスト、非連続型テキスト、どちらを読み解くにも土台には大体を読み解く力が必要です。この範囲が広ければ広いほど、正確に読み解ける範囲が広がります。土台を広げるには語彙や知識を増やす必要があるので、そのためにも新聞はふさわしい教材だと言えますね。教科書は学習段階によって内容が限られてきてしまいますから。

--でも本当に、新聞を読んでいる子供の学力テストの正答率は高いんですか?

関口先生:NIEタイムという、週1回程度10分~20分新聞を読ませる時間をとる活動があります。(1)新聞を読んで、気になった記事や写真をひとつ切り取る (2)ノートに貼って、マーカーペンで線を引く (3)要約や感想・意見を書くという活動です。
 この活動に取り組む小学校10校と全国の小学校の平均点を比較しました。国語Aでは5.9ポイント、算数Aでは6.4ポイントもNIEタイム実践校の方が平均点が高いことが分かります(2017年日本新聞協会調べ)。
 この結果からも、新聞を読むと学力テストの正答率が上がると言えます。

--効果があるのは分かりましたけど、どうやって子供に読ませればいいんですか? 新聞はボリュームもあるし、本を読みたがらない子供が進んで読むとは思えません。

関口先生:全部読む必要はありません。まずは見出しだけ読んでみようと誘ってみてください。見出しというのは新聞記事のタイトルです。「究極の要約」と呼ばれています。新聞をめくりながら見出しを斜め読みして、気になる記事を探したり、おもしろい写真を探したりする。続けているうちに記事本文を読むなど、次のステップに進めるようになります。気長に無理せず、毎日10分だけ、新聞と向き合ってみてはいかがでしょうか。

   2018年5月28日公開