働き方改革につながる 意外なツールとは

新聞購読者と非購読者に対し「残業時間は短いか」という調査を実施したところ、購読者の64.5%が「残業時間は短い方だ」と答えた。一方、非購読者は55.9%で、8.6ポイント低かった。

なぜ、新聞購読が残業時間に影響を与えているのか。習慣的に新聞を購読しているという銀行員のY氏に話を伺った。

残業が”できない”時代。

「以前は退社時間が問題視されなかった銀行も、社会の風潮もあって、現在は原則6時退社というふうに厳しく規定されています」とY氏。「時間をかけながら仕事をこなしていた昔と違い、よほどのトラブルでもない限りは、ほぼ強制的に退社となります」

そんななか求められはじめたのが、“限られた時間でいかに仕事を回していくか”という能力だという。

書類作成に効果を実感。

その能力が最も問われるのは、社内承認を得る書類をつくるときだ。「融資先の業界が今どういう状況で、今後どういった動きをしていくのか。そうした業界動向を踏まえないまま書類をつくってしまうと発生するのが、上司からの“差し戻し”です」とY氏。差し戻しになると、再作成となるので大きく時間を取られてしまう原因に。

「私は新聞を読んでいるので、担当している業界の動向は自然とチェックできていると思います」

日頃から業界動向を把握しているY氏と、書類を作成するたびに調べ直す他の行員とでは、書類を仕上げるスピードも承認の通りやすさも、大きく変わってくるのかもしれない。

スムーズな商談成立にも一役。

「効率化もそうですが、商談の成功率向上にも効いてるな、と感じることがあります」というY氏。そのひとつの例として、商談を成立させることから逆算した“ビジネス雑談”について語ってくれた。

「その日、日銀が規制緩和を行うという新聞記事を見て、雑談に持ち出したんです」

規制を緩めるということはつまり、銀行の金利が上がる可能性がある、という会話に発展させたY氏。取引先は「融資を受けるなら今か」と踏み切ったという。がむしゃらな営業トークや接待ではなく、毎朝の新聞が役立った例だ。

ストックした情報が、業務効率を高める。

新聞は、単発的な情報ではなく、“線の情報”として、自分に必要な情報を切り抜き、ストックしておくこともできる。それが業務効率化と質の向上につながっているのでは、とY氏は分析する。社会全体がなんとか「残業時間を減らそう」と動く今、新聞を読むことが、自然と働き方改革につながっていたようだ。