【花まる学習会・高濱先生に聞く】イキイキと伸びる子に共通している“言葉の力” 新聞活用メソッドも大公開!

約30年にわたり、小学生を中心とした学習教室「花まる学習会」を運営してきた高濱正伸さん。多くの子どもと接する中で、イキイキと伸びる子に共通するのは “言葉の力” が親子共に優れていることだそうです。知らない言葉をすぐに調べたり、子どもの言い間違いをきちんと直してあげたり・・・。成長に応じた子どもとの向き合い方や学びの習慣について、高濱さんが日本新聞協会×HugKum特別セミナー(2023年2月)で語りました。イベントレポートをご紹介します。

 

偏差値ばかり意識するとやらされ人間に

高濱さん: 日本には、定職には就きたいけれど、やりたいことを見つけられない人がたくさんいます。その原因として、偏差値という「外側の基準」ばかりを意識させられ、評価されてしまう風潮が挙げられます。自分の心を見つめてやりたいことを見つければいいのに、「偏差値をあと5上げれば医学部に入れる!」などと言われ、興味と違うことをやらされてしまう。そんな、やらされ人間になってしまうのです。 

 

「自己肯定感」があらゆる能力の土台

高濱さん:勉強には2種類あります。1つは、ひらがなや漢字、計算のような「基盤力」。これは、なくてはならない力ですが、早くからやらせることに意味はありません。幼児のうちから割り算をやらせるようなご家庭もありますが、慌てる必要はありません「基盤力」はやる気があればすぐに追いつく力です。

むしろ幼児期に育てたいのは、思考力や体力、感性、人間力といった「強み」の部分です。考えることや絵を描くこと、走ることなど、その子の好きなことを集中して伸ばすことが必要です。「好き」に焦点を置かないと、前述のようなやらされ人間になってしまいます。関心事は本人の中にしかありませんので、子どもが好きなことを見つけたら集中してやらせてあげてください。

そして、長年子どもたちと接してきて、これらの能力の土台が「自己肯定感」であることに気づきました。「自分はここにいていいんだ」「世界って楽しい」「お母さんは本当に私のことが好き」「嫌なことがあっても明日はうまくいく」。世の中に対してこのような肯定的な気持ちがある人は、へこんでも立ち上がり、乗り越えることができます。どんな勉強をさせるかよりも、まずは自己肯定感を高めてあげてほしいと思います

 

幼児期と思春期で親に求められるものは正反対!

高濱さん:子どもの成長は幼児期(4~9歳頃)と思春期(11~18歳頃)では大きく違います。幼児期の子どもにとって、世界で一番大切なものは家。とりわけお母さんが大事な存在で、この時期に必要なのは「愛としつけ」です。

一方、思春期になると正反対になります。お母さんが良かれと思ってかけた言葉にも「うっせーな!」と返すなど、これまでの干渉を受け入れなくなります。一番まずいのはこの時期の過干渉。思春期以降もこれまで通りに世話を焼き続けると、将来引きこもりなどに発展することも。

思春期になったら、お母さん主導の時期は終わったと思いましょう。子どもを外の世界に預ける時期です。子どもはコーチや先輩、アイドルなど、外の世界を仰ぎ見るようになります。たとえミスをしても、外で恥をかいて学べばいいのです。子どもには外に師匠を見つけてあげることが大事です。お母さんも趣味を始めるなど次の方向性を見つけ、その姿を子どもに見せると良いですよ。

 

あとで伸びる子のエンジンは親から学ぶ「言葉の力」

高濱さん:「あと伸びするお子さんの家庭は、他の家庭とどう違いますか?」という質問をされることがありますが、いつも「言葉がしっかりしている家庭」と答えています。

これまで多くの家庭を見てきましたが、伸びるお子さんは、エンジンとしての“言葉の力”が親子共に優れていると感じます。

伸びる子の親は言葉の使い方に厳密です。子どもが言い間違いをしたとき、きちんと直してあげるんですね。例えば、「うれしい」と「楽しい」の使い方の違いをきちんと指摘できますか?

言葉を厳密に使っている親は社会的に成功している人が多いです。だから子どもの成績も良いのです。それが子どもにも引き継がれるのです。

言葉に厳密な親は、わからない言葉に出合った際、すぐに調べる傾向があります。以前、中学3年の子どもたちに「あなたの両親は、わからない言葉に出合ったときに調べていましたか?」とアンケートを取ったところ、調べていると答えた家庭ほど、子どもの偏差値が高い傾向がありました。 

 

おすすめツールは新聞

高濱さん:言葉を育てるための具体的な方法をご紹介します。言葉の力をどうやって伸ばすか考えた時、新聞には大きな可能性があります。毎日当たり前のように読んでいる新聞ですが「こんなすごい情報が載っているなんて!」と驚く瞬間があります。

新聞はわからない言葉が満載の宝の山です。「言葉ノート」を作るのもお勧めです。ノートに横線を引き、線の上側にわからなかった言葉を、線の下側には調べた意味や読み方を書きます。小学4年生くらいから始めると良いです。6年生になる頃には語彙(ごい)力がグンと伸びてきます。私もいまだに作っています。これは一生の財産になりますので是非作ってみてください。

あるお父さんは、新聞の中から知らない言葉を1つ見つけ、調べることを毎日の習慣にしているそうです。子どもに対して「私は、知らない言葉をいつでもわかろうとする生き方をしているよ」という姿を見せることが大事。皆さんも新聞を使って言葉を大切にする家庭にしていただければと思います。

 

記事を読んで考えをまとめる、説明する

高濱さん:新聞は対話のツールにもなります。

以前、中学3年の生徒が「公民を勉強する意味がわかりません」と言うので、新聞記事を1つ選んで授業に毎回持ってくるように伝えました。持ってきた記事について、私が大人としての本音を語り、その子に書き留めてもらいます。同時に、自分がどう考えるかを書き添えるというワークを3か月ほど続けました。3か月後、その子は社会で起きているニュースに問題意識を持てるようになっていました。この方法は、聞いたことや自分の考えをまとめる力も身につきます。

小学生の子どもには、家族団らんの時間に、今日学校で習ったこととそのポイントを説明させましょう。人に説明する力がつきますし、復習にも役立ちます。ただ、きちんと授業を聞いていなかった場合「あなた全然授業を聞いてないじゃない!」と親が怒り出すパターンになりますのでご注意を(笑)

子ども新聞の中から一番面白かった記事を説明させるのも良い手です。子どもが選ぶものは、記事ではなくクイズ欄でもいいのです。新聞というたくさんの情報の中から選び抜き、話をさせることに意味があります。

 

高濱さんには、参加者からの質問にも答えていただきました。

Q.子どもの言葉遣いを全部直していたらケンカになりそうです。間違いを正す時、うまい言い方はありますか?

高濱さん「~でしょ」ではなく「~って言いたかったんだよね」というように、プライドを守りながら教えてあげるといいしょう。反抗することもあるかもしれませんが、長い目で見れば間違いを指摘してもらった方が本人にとって得ですからね。

Q.子どもに新聞を読ませると「この漢字何と読むの?」とちょくちょく聞いてきます。自分で調べさせた方がよいでしょうか。

高濱さん:その子の性格や学年にもよるのですが、すぐに答えてもいいですし、辞書を引いてみせるのもいいでしょう。親は万能ではなく、わからないことがあれば調べているという姿を見せるのが大切です。

 

2023年5月30日公開