情報収集力を高めることは、仕事のパフォーマンス向上につながります。ビジネスパーソンが参考にしたい新聞記者の情報収集術について、中日新聞の森若奈記者に聞きました。ビジネスに役立つ新聞活用法も話してもらいました! (この記事は2024年11月に開いたトークショーを基に構成しました)
話を聞いたのはこの方!
目次
現場で人に話を聞き、ファクトを積み上げることが大事
――新聞記者はどうやって情報を集めているんですか?
新聞記者の仕事は、情報を集めるところから始まります。公的機関や企業のリリースがきっかけになることもあれば、LINEで読者から情報提供を受けて取材が始まることもあります。地域で広げた人脈を生かして、足で稼いだ耳よりな情報が端緒になることも。そうした情報を元に、今度は当事者やその相手方、専門家に話を聞き、一つ一つ事実を積み上げていきます。
当事者の証言だけでは不十分|相手側の話も聞く
一つ例を挙げますね。
2021年11月8日の東京新聞朝刊に「実習生 契約外労働やまず 『溶接』のつもりが『ゴミ分別』手伝い」という記事が載りました。私が今まで書いた中で一番印象に残っている記事です。
きっかけは、インドネシアから来た技能実習生たちが「溶接の仕事だと聞いて来たのに、実際はゴミの分別をさせられている」と訴えているという情報提供でした。まず、6人いた実習生に会いに行き、通訳を交えて話を聞きました。
でも新聞社ってそれだけでは記事を書かないんです。
彼ら6人の勤務先は産業廃棄物処理会社でした。その会社の社長にも言い分があると思うので、取材を依頼し受けてもらいました。
社長は「この業界はなかなか人手が集まらない」という話もしつつ、溶接作業を任せる契約に反して実習生にゴミ分別をさせていたことを認めました。
実習生を仲介した業者や送り出し機関を運営している会社などにも話を聞き、技能実習制度が形骸化している実態を記事化しました。
大事なのは、現場に赴いて実際に話を聞くことです。
「こういう被害を受けた」「こういうひどいことをさせられている」という話だけでは書かず、裏には何があるのか、もう一方の当事者にもしっかり話を聞き、その問題の背景も調べてファクト(事実)を詰めています。
取材で事実を詰めた記事と「こたつ記事」を見分けてほしい
――ネットにはテレビ番組の内容やSNS上の情報を紹介するだけの「こたつ記事」と呼ばれるものがあふれていますよね。森さんはどう感じていますか?
私たちが書いた記事と「こたつ記事」がネット上で同列に表示され、見分けにくくなっていることに危機感を抱いています。皆さんには、情報の精度を意識して記事を読んでもらいたいです。
新聞の1面の見出しとリードを読めば世の中の動きがつかめる
――新聞を全て読むのは大変そうです。効率的な読み方はありますか?
私も大学時代は「新聞ってすごく難しいな」と思っていた一人でしたが、伝えたいのは「新聞って全部読まなくても良い」ということ。まずは1面をぱっと見てみてください。新聞社がその日いちばん伝えたい記事は、1面に載っています。
重要なニュースほど、大きな見出しをつけています。見出しに続く記事の最初のパラグラフは、記事のポイントをまとめた「リード(前文)」と呼ばれます。私たち記者は、リードを読めば記事の内容が伝わるように書いています。まずは見出しを眺め、リードを読めばその日の主なニュースをつかむことができます。
次に、1面に載っているインデックスを見てほしいです。編集者が「これは面白いぞ」と思ったその日の記事をピックアップしています。興味がある見出しを見つけて新聞をめくってみてくださいね。
紙の新聞とデジタル版、それぞれのメリット
――新聞は紙で読んだ方が良いのですか?
新聞社が出しているものでしたら、紙・デジタルどちらでも良いと思います。紙は広げることでさまざまな記事が目に飛び込んできて、今どういうことが話題になっているのか、ぱっと分かります。一方で、デジタルは記事のクリッピング機能や検索機能があるのが便利です。
スマートフォンのアプリで紙面のレイアウトのまま読める「紙面ビューアー」というサービスもあります。
新聞のデジタル版はビジネス情報のデータベース
新聞社のデジタル版は、ビジネスツールとしても便利です。
仕事の中で分からない用語が出てきた時に、デジタル版のサイト内で記事検索をかけると、関連記事が出てきて詳しい解説を読むことができます。ビジネスに必要な情報のデータベースとして活用できます。
例えば「TCFD」という言葉。
中日BIZナビのサイトで検索すると、10件ヒットします。この言葉は、企業の総務部などにいる人でないと知らないかもしれません。
記事を読むと、TCFDは「気候関連財務情報開示タスクフォース」の略称で、企業に対して気候変動がもたらす財務上のリスクや機会の開示を呼びかけている国際組織であることが分かります。東京証券取引所はプライム市場に上場している企業に対して、TCFDの提言に基づく情報開示を求めています。
ビジネスシーンで、このような聞き慣れない横文字が出てきた時にこそ、新聞社のニュースサイトを使ってもらいたいです。
分からないことは検索すればいいと思いますし、そういう道具の1つに私たちのデジタルサービスを使ってもらいたいという思いで仕事しています。
新聞は朝読んでも、まとめ読みでもOK
――新聞は朝読んだ方が良いですか?
忙しい社会人には通勤などの時間を活用して、アプリなどで読んでいただきたいなと思うのと同時に、新聞は好きな時間に読んでもらいたいと思っています。夜、家族とのコミュニケーションツールとして使うのも選択肢の一つです。
――新聞は当日読むべきでしょうか?
私自身も、他社の紙面を金曜日など時間がある時にまとめて読むことがあります。時間がある時に読んでいただければいいかなと思います。
――新聞の読む順番は?
基本的に自由です。一般の新聞はテレビ欄を1枚めくったところが社会面です。社会面にいちばん大きく掲載している記事は、私たちが1面の次に読んでほしい記事だったりします。もしよければ1面を読んだ後にちょっとテレビ欄を1枚めくっていただけると私たち一押しの記事がそこに載っています。
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この記事では、新聞記者の森さんに聞いた情報収集術とビジネスに役立つ新聞活用法を紹介しました。
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