「読む」習慣で高まる力-学力テストの結果分析から

お茶の水女子大学 基幹研究員 人間科学系 

准教授 冨士原 紀絵 さん

「読む」習慣で高まる力-学力テストの結果分析から


 お茶の水女子大学では2013年度に続き、17年度の全国学力・学習状況調査の追加調査として実施した「保護者に対する調査」の結果を活用した文部科学省による委託研究を行った。これは家庭の社会経済的背景と学力との関係、学力に影響を与える学校・家庭・地域の取り組み等を多様な観点から統計的に分析するとともに、学校がおかれている社会経済的背景に比して継続的に高い学力成果を上げている学校と、成果が上がりつつある学校について事例研究を行ったものである(報告書全文は以下の文部科学省ホームページに掲載。http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku-chousa/1406895.htm)。

 

 読むことに関して、前回調査では子供自身の読書行動や保護者の子供への働きかけ(幼児期の絵本の読み聞かせ等)と学力成果との相関が明らかになった。今回の保護者に注目した分析結果では、大都市圏の社会経済的に恵まれていない家庭であるにも関わらず学力調査で好成績の子供の保護者には「本を読む(電子書籍は含むが漫画や雑誌を除く)」、「テレビやインターネットで政治経済や社会問題に関するニュースを見る」、「新聞の政治経済や社会問題に関する記事を読む(電子新聞を含む)」といった行動、そして家庭の蔵書数が多いという傾向がみられた(第4章 金子真理子担当)。好成績の子供の読書行動が充実しているとすれば、こうした家庭や保護者の意識や行動が影響していると考えられる。

 

 保護者のメディア利用の面では、さらに特徴的な結果も明らかになった。地域や学力結果にかかわらず、保護者の9割以上が「テレビやインターネットで政治経済や社会問題に関するニュースを見る」と回答している一方で、「本を読む」そして「新聞の政治経済や社会問題に関する記事を読む」と回答した割合は好成績の子供の保護者に多く、活字メディアを頻繁に利用しているという実態である。あくまで保護者の行動ではあるものの、テレビやインターネットとは異なる、活字メディアの果たす何らかの教育的効果が浮かび上がったといえる。

 

 インターネットで配信されるニュースは新聞同様にその多くはネット上で活字化されている。新聞との違いはどこにあるのだろうか。さまざまな見解があるだろうが、ここではネット配信の情報は随時更新され、新聞とは違い、丁寧に読むのが困難な点を指摘したい。ネット配信の情報はテレビほどではないにせよ即時的で一過性である。あくまで「見る」対象に過ぎないテレビやネットと違い、時間をかけて「読むこと」が可能な媒体を活用することで高まる力がある。その力が具体的に何であるのか。保護者のこうした力が子供の学力にいかなるプロセスで影響を及ぼすのか。さまざまな専門家とともに検討するに値する課題である。

 

NIEニュース(第92号)より

  2019年1月16日公開

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