人に寄り添う目線大切に

宮下奈都(みやした・なつ)
1967年福井市生まれ、同市在住。上智大卒。
2004年、36歳で初めて書いた小説「静かな雨」で作家デビュー。著書に「スコーレ№4」「よろこびの歌」「窓の向こうのガーシュウィン」「誰かが足りない」など。調律師の青年の成長を描いた長編小説「羊と鋼の森」で16年本屋大賞。同作は映画化され、全国東宝系で6月8日公開。最新刊はエッセー集「とりあえずウミガメのスープを仕込もう。」

人に寄り添う目線大切に


 家族を仕事や学校に送り出し、地元紙を広げる。何か面白いことがないか、わくわくしながら。友人の子どもがスポーツで活躍している記事を見付けるとうれしくなる。身近な人の動静だけでなく、地元で頑張っている人を知ったり、こんな風習があったのかと発見したりするのも楽しい。

 子どもが犠牲になった記事が多い日は、読むのがつらい。いじめや子どもの自殺などが起きないよう、大人にできたことがあったのではないかと思うから。子どもの健やかな成長をいつも願っており、他の子どももそうであってほしい。

 生まれ育った福井で3人の子育てを優先して自分のペースで執筆してきたが、2013年春から1年間、思い切って一家で北海道・トムラウシに移住した。この時購読していた新聞を含めて地方紙、全国紙、英字紙と現在6紙を取っている。東京や秋田、新潟、京都にも住んだが、地元紙は欠かせなかった。土地を知るにはそこで最も読まれている新聞を読むのが一番。暮らしを豊かにする情報が詰まっている。

 普段の生活と世の中を結び付けるのが新聞だと思う。私の小説は暮らしの中で生まれていて、新聞がなかったらリアリティーがなくなってしまう。新聞はとても大事なもの。何紙も購読しているのは、子どもたちに世の中をいろんな視点で見てほしいという思いもある。

 毎日届く読み物は〝知り合い〟や〝顔なじみ〟のような存在。信頼しているからこそ、読む人の目線で書いてほしい。何者でもなかった私が初めて書いた小説に目を掛けてくれた選考委員や編集者がいたから作家になれた。新聞は、誰にも気付いてもらえずつらい思いをしている人に寄り添うものであってほしい。

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